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暴落相場とインフレ本番はこれからだ
澤上 篤人
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株式
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経済社会
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マネー膨張の歴史

今の世界経済について考えるにあたり、まずは過去に各国の中央銀行がどのような政策を行なってきたのかを知る必要があります。下の図表をご覧ください。

 

 図表:大量のマネー供給の歴史

出典元:「暴落相場とインフレ 本番はこれからだ」

こちらは、1970年以降の資金の流れを整理した図です。各国の中央銀行(日本でいう日本銀行)は過去およそ40年間、様々な問題が起こるたび、お金を市場に大量に流したり、金利を引き下げることで景気回復をさせる「金融緩和政策」を続けてきました。

しかしその結果としては、大量にマネーをバラ撒いてきた分だけ経済規模が拡大しただけで、大した経済成長はできていないのです。確かに、コロナ禍で世界経済は停滞しているはずなのに、米国株は上昇を続け、日経平均株価は一時3万円を超えるなど、実体経済と異なった動きをしているように見えます。

バブル崩壊の始まり

世界株価が実体よりも異常な割高となっていることに加え、次に説明するインフレや利上げなどにより、近い将来大きなバブル崩壊が訪れる事が予想されます。

悪いインフレの到来

世界では近年、インフレ(モノの値段が上がり続けること)が深刻化しています。そこには「コロナにより人手や物資が足りなくなったこと」、「環境問題に配慮した結果、エネルギー価格が高騰したこと」、「ロシア・ウクライナ戦争で原油価格等が高騰したこと」など、様々な要因が絡んでいます。

世界が盛り上がった結果の「良いインフレ」であればまだ良いのですが、今回のように「供給側が原因」でモノの値段が上がるインフレの場合、人々の消費は落ち込み、経済はマイナスに進んでいくと言われています。

各国が利上げに向かってる

インフレを放置すると物価が上がり続け、国民の生活はどんどん圧迫されてしまいます。そのため近年、世界の中央銀行では、「利上げ」をすることで需要を落ち込ませ、物価の上昇を抑えようとする方向に向かっています。米国では、2022年2月には0.25%だった政策金利が、2023年2月にはなんと4.75%にまで上昇しています。

利上げに抵抗する日銀

しかし、「利上げ」にもデメリットがあります。それは、「経済の成長が止まってしまう」ことや、「金融機関や、住宅ローンを利用している人に、大きな問題が起きること」です。だから、日本の中央銀行、日本銀行は今、「利上げ」を避けて、「金融緩和」を続けようと考えています。

このままだと日本はスタグフレーションに! 

もしも日本銀行がこれからも「利上げ」をしないと、どうなるでしょうか?「利上げ」をしないと、物の値段が上がり続けます。でも、給料は、経済が元気になっているわけではないから、あまり上がりません。そして、モノの値段が上がるということは、お金の価値が下がるということを意味します。

それで、「給料は上がらないのに、物価だけ上がり続け、預貯金の価値も減ってしまう」状態になってしまうんです。これを「スタグフレーション」と言います。そして、これが起こると、我々の生活がどんどん大変になってしまいます。

2023年4月から日銀の新総裁に就任する植田和男氏には、適切なタイミングで利上げに転換できるかどうか、といった非常に難しい課題も残されているのです。

ブル崩壊にどう備えるべきか?

では、このように世界経済がバブル崩壊に近づいていく中、我々はどのように対策をしておくべきなのでしょうか?

長期投資の重要性 

最近の一般的な株式投資では、儲かるかどうか、すなわち値上がりしそうかどうかで企業の良し悪しが判断される傾向にあります。その会社の社会性や倫理観などは関係なく、「今後儲かりそうな企業が良い企業」という考えです。でも、この考え方では、将来の可能性に投資していく株式投資本来の姿など、忘れ去られたも同然となっています。

 

長期投資家は、短期で儲けることを目的としません。長期投資においては、「儲かるかどうか?」、「今話題の企業かどうか?」ではなく、「本当に応援したい企業か?」、「我々の生活に必要な企業か?」といった視点で投資先を選ぶことが大切なのです。

金融資産のほとんどは売ろう

では具体的に、どのような資産を持ち、どのような資産は手放すべきなのでしょうか。答えは「大崩れしはじめる前に、ほとんどすべての金融商品は、片っ端から売ってしまう」ことです。一度バブルが崩壊すると、値崩れするのは本当に一瞬です。近い将来バブル崩壊が来るのであれば、「売れるうちに売っておこう」という考えです。

銀行に置いておくのは危険!

では、金融商品を売って手に入れたお金は、どこに置いておけばいいでしょうか?売ったお金を銀行に預けておくのは危険です。

バブル崩壊が始まると、金融機関も巨額の不良債権を抱え、身動きが取れなくなります。過去に日本では預金封鎖をしたこともあり、銀行なら絶対大丈夫とも言えないのです。

金融商品を売った代金は、そのまま証券会社に預けておきましょう。株式投資やその売却資金は、「決済性の資金」と位置付けられています。これは、経済を動かすのに必要な資金とみなされ、信託銀行に信託財産として保管されるため、預金封鎖などになった場合でも関係なく引き出すことができます。

国も対策してくるのでは?

「それだけ深刻なバブル崩壊になるなら、各国政府も事前に対策してくるでしょ?」と思うでしょうが、なにせ今回のバブルは、悪いインフレが原因で、金利が上昇している状況です。バブル崩壊を阻止しようと金融緩和でお金を投入すれば、更なるインフレで国民の生活は苦しくなります。

さらにこれまでのインフレで国債の価値は下落し、どの国も債務超過の危機に直面しているでしょう。これ以上大規模な国債発行などできないかもしれません。そう、今までのように、「お金を投入しておけばなんとか先送りにできる」という作戦が使えないのです。

バブル崩壊後の生活はどうなる?

ここまでとても後ろ向きな話題が続きましたが、バブル崩壊後、一時は倒産企業が多発し、失業問題を引き起こすが、それと一般生活者の日々の生活は別。日々の消費と生産・供給活動はなんら変わることなく続き、これといって身構える必要はないのです。

 

バブル崩壊で多くの倒産が起こりますが、本当に優良な企業だけが生き残るため、日本経済の再生のためには避けて通れない道なのです。

我々に今できることは、近い将来起こるバブル崩壊に備えて投資先の選定をし、世間がバブル崩壊でパニックになる中、冷静な投資判断を続けていくことでしょう。

著者
澤上 篤人
さわかみホールディングス代表取締役、さわかみ投信創業者。同社の投信はこの 1 本のみで、純資産は約 3300 億円、顧客数は 11 万 7000 人を超え、日本における長期投資のパイオニアとして熱い支持を集めている。
出版社:
明日香出版社
出版日:
2022/09/22

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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