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アルゴリズムトレードの構築方法
ペリー・J・カウフマン
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株式
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知識・教養
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世界一簡単なアルゴリズムトレードの構築方法ーあなたに合った戦略を見つけるために

アルゴリズムトレードとは何か?

アルゴリズムトレードとは、コンピューターがマーケットの動向を判断して、自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引を指す。

金融工学などを駆使して最良の執行タイミングで売買を行うもので、大口注文を細分化して株価に影響を与えないように購入したり、数百銘柄を同時に取引したりするなど、さまざまな手法がある。

本書は、プロトレーダーのみならず、そんな今日のテクノロジーを使った最良のトレーディングを試してみたい一般投資家にとって非常に有益な一冊に仕上がっている。

成功するためのアルゴリズムトレードシステム構築方法を、簡単なハウツー形式で教えてくれる本書は、著書の幅広い経験に基づいて奥深いトレーディング手法も余すことなく披露されており、トレードの世界に携わる全員に多くの学びを提供してくれている。

アイデア

あなたのトレード方法ーつまり、あなたのトレードの性質ーに合ったアイデアを見つけられるかどうかは、あなた次第だ。あなたを惑わせるようなトレードを自分に強要してはならない。

あなたのトレードの性質は簡単には変えられない。もし短期トレーダーなら短期戦略を見つけるべきだし、市場を毎日見るのが面倒くさい人は、長期トレンドフォロー、あるいは週次シグナルを使えということだ。

複雑にするな

システムをわけもなく複雑にするのは自滅行為だ。複雑にするということは洗練されたものになるどころか、混乱を招くだけである。可動部がたくさんありすぎれば、何がうまくいき、何がうまくいかないのかは分からなくなる。

それに、複雑なものを理解するのは難しく、間違ったときに修正するのが難しくなる。これは多くの人が犯す過ちだ。アイデアは簡単に理解できるようなものでなければならない。アイデアをトレードシステムに変換するときもシンプルにすることが重要だ。

トレンドフォロワーは利食いや損切りは使うな

トレンド戦略には、重要なポイントがある。トレンドフォロー戦略を使って長期にわたって利益を得るためには、長く続くトレンドー予測できないほど非常に長く続くトレンドーをとらえる必要がある。このような動きを「ファットテール」という。

しかし、ファットテールは予測不可能だ。金利の30年にわたる下落、1オンス2000ドル近くまで上昇した金価格、原油の上昇と下落、1990年代のITバブル、2008年の金融危機、抵当貸付の甘い基準の結末などは、今振り返って初めて分かることである。

損切りはすべてのシステムで機能しないわけではないが、トレンド戦略で使うのは間違っている。それは長期的な利益を犠牲にして、短期的損失を減らそうとするようなものであり、しかも良いトレードの比率は大幅に低下する。

そして、トレンド戦略にとっての利食いは利が乗っているときにテーブルからお金を引き込むようなものだ。利益は得ることができるかもしれないが、トレンドは依然として上昇している。再び仕掛けなければ、ファットテールを逃すおそれがある。利食いは、リスクを管理するというよりも、利益を管理するものである。損切りと同じように利食いにも役割があるが、トレンドフォローでは効果はない。

短期トレーダーは利食いせよ

利食いは短期トレーダーにとっては非常に重要だ。そして、短期トレードにはファットテールはない。短期トレードでは、小さな利益と小さな損失しかない。実際にはそれらのほとんどはノイズである。

時間枠を長期から短期に変えると、つまり週足から日足へ、あるいは日足から5分足に変えると、価格チャートはランダムな動きに見えてくる。

短期の時間枠では、価格には小さな動きがたくさん現れ、それぞれの動きが買いや売りを表している。一歩後ろに下がって全体像を見ると、トレンドが現れてくる。データが少ないと、価格ノイズによってトレンドを見つけるのは難しくなる一方で、短期トレーダーはランダムな動きを有利に使うことができるのだ。

完璧なシステムを求めて

最良のシステムを見つけるにはバックテストをする必要がある。アルゴリズムトレーダーの場合、ルールをプログラミングして、検証することができる。システマティックトレーダー(自由裁量的だが、明確なルールはある)の場合、過去のシナリオを見て手法を確認する。これは科学的とは言えないが、これがあなたにできるベストなことだろう。

バックテストの目的はただ1つーあなたのアイデアを確認することである。そのための最良の方法は、過去のパフォーマンスを見ることである。過去のパフォーマンスが悪いシステムは、トレードする必要があるだろうか。また、過去にうまくいったからといって、将来的にもうまくいく保証はないが、少なくとも過去の値動きであなたのアイデアがうまくいくことを確認する必要はある。

毎年良いパフォーマンスを上げるのに、たとえそれが長期的に最良の結果を示していたとしても、1つのパラメーターの組だけを使うのは危険だ。

パラメーターの組を1つしか選ばないというのは、1つの銘柄しかトレードしないのと同じことである。最大リターンが得られる可能性がある一方で、最大損失を被る可能性もある。異なる2つの銘柄をトレードすることで、平均リターンが得られるし、リスクも少なくなる。パラメーターの選択もこれと同じだ。2つではなく、3つか、4つのパラメーターの組み合わせを使えば、リターンはもっと安定する。

検証ー重大な選択

検証は必要悪だ。したがって、検証の良い点と悪い点を知っておく必要がある。成功か、あるいは良いアイデアを失敗に終わらせるかは開発段階で決まる。正しく検証できるのは、すべてが明確なルールで規定されたシステマティックトレーダーだけである。

トレードもそうだが、検証をコントロールするには相当な規律が必要になる。コンピューターは強力な味方で、正しい答えを与えてくれる一方で、間違った答えを出してくる。コンピューターはあなたが質問したことに答えてくれるが、あなたの質問が間違っているかは教えてくれないという点には注意が必要だ。

大まかに言えば、バックテストで利益が出たトレードのパーセンテージを見て、堅牢さを測定する。どれくらいの利益が出たかは問題ではない。重要なのは、どのパラメーターの組み合わせがコスト差し引き後に利益を出したかである。つまり、パラメーターの範囲を慎重に決めて、うまくいかないことがはっきりしている組み合わせをたくさん含まないようにするわけである。

結果ががっかりするようなものであった場合、損失の原因となったトレードを調べることになる。いったい何が問題だったのか。

100回の検証のなかから最高の結果を出したパラメーターを選ぶとする。それらのパラメーターが翌月、あるいは翌年にも最高の結果を出す確率はどれくらいあるだろうか。通常、最高の結果を出したパラメーターのパフォーマンスは、最悪になる可能性が高い。

なぜなら、最高の結果を出すことができたのは、普段とは異なる値動きや価格ショックのおかげかもしれないからである。十分な数の検証を行なえば、1つの検証はサプライズイベントが価格を高騰させたり急落させるときに市場の正しい側にいるかもしれない。

しかし、そういったイベントは繰り返し発生するわけではない。したがって、パラメーターを選択するときに外れ値に依存すれば、将来的なパフォーマンスには失望することになるだろう。

私はどのパラメーターが翌日に最高のパフォーマンスを与えてくれるかを予測できた試しはない。したがって、平均パフォーマンスを再現できるように努めている。私が成功をすべての検証結果の平均で判断するのはそのためだ。

平均結果を得るためには、戦略を、3つ以上の異なるパラメーターのサンプルを使ってトレードし、広範にわたる結果を取得する必要がある。

先物についてもっと詳しく

商品先物市場の相互関係は非常に複雑だ。金利の動きはすべてのものに浸透している。なぜなら、金利によってすべての商品先物のキャリーコストが決まってくるからだ。

例えば、受け渡しが6ヵ月先の金先物を所有しているとすると、金を6ヵ月保有するコスト(契約のトータル価値に対する金利、保管料、保険)を支払わなければならない。大豆であれば、コストが上昇すると家畜のエサにかかるコストも上昇する。

先物市場は6つのセクターに分かれているー金利、FX、株価指数、エネルギー、貴金属、農産物。さらに、金利は満期の長いものと短いものに分けられ、貴金属は貴金属と非貴金属に、農作物は穀物、畜産、ソフトに分けられることもある。

先物は、すべてのセクターが良い分散化を提供してくれるとは限らない。金利は相関性が非常に高い。つまり、アメリカが金利を上げるとほかの国も金利を上げる可能性が高いということだ。

しかし、ほかの商品先物は金利ほど相関性は高くない。たとえば、金属には金と銅が含まれる。金はインフレヘッジとして使われるが、銅は住宅建材として使われる。金と銅は基本的には関連性はない。

先物ポートフォリオをトレードするときは、少なくとも3つのセクターでイクスポージャーが同じになるようにトレードすることが重要だ。

ポートフォリオのために最良の株式と先物を選ぶ

ポートフォリオに組み入れる銘柄を検討する際は、まず株式市場と先物市場を自分の戦略に基づくパフォーマンスでランク付けしよう。

アンダーパフォームの問題を避けるためには、成功する可能性が高い銘柄をポートフォリオに組み込む必要がある。しかし、それほど前にさかのぼる必要はない。過去2年間、その戦略で利益が出ていれば、その戦略はうまくいくと考えてもよいだろう。利益の大小は問題ではなく、ただ利益を出していればよい。

ランク付けには利益だけを使うことに注意しよう。条件を設けすぎて、銘柄の選択を制約してしまえば、良い銘柄を選ぶことができなくなる。基準はシンプルである方が良いのだ。

この方法は先物にも応用できる。まず、パフォーマンスで銘柄をランク付けし、パフォーマンスの良いものからポートフォリオに組み込んでいく。先物については、1つのセクターから選ぶ銘柄数に制限を設ける必要がある。こうすることで、1つのセクター、例えば金利などに、すべてのお金を投じるというリスクはなくなるのだ。

銘柄に戦略を合わせる

トレンドを見極めるうえで邪魔になるのが価格ノイズである。ノイズが低いということは、価格がスムーズに動いていることを意味する。

「スムーズ」とはボラティリティとは無関係で、価格が一方方向に動いていることを意味する。方向が変わると、今度は新しい方向に継続して動き出す。低ノイズはトレンドフォローにとって都合がよく、高ノイズは平均回帰にとって都合が良い。

そうした価格ノイズを測定するものとして、「効率レシオ」がある。効率レシオとは、n日間の値動き(n日の最初と最後の価格の差)を、それぞれの日における絶対値の合計で割ったものである。銘柄が1つの価格から別の価格に直線状に動いた場合、その銘柄の効率性は高く(完全に効率的)、トレンドフォローのような方向性アプローチで利用することができる。価格が酔っぱらった船乗りの歩きのように上下動を繰り返しながら動く場合、その銘柄は非効率的であり、効率レシオは低く、平均回帰アプローチで利用することができる。

トレンド戦略の構築

長期トレンドは市場の基調的な方向性をとらえるものだ。つまり、価格が経済政策にどう反応するかをとらえるということであり、日々のニュースによるノイズは無視される。

トレンドを見つけるために最もよく使われるのは、移動平均線、ブレイクアウト、線形回帰である。これらの戦略は短期的にはパフォーマンスが少しずつ異なる。長期的には、これらの戦略はトレンドが形成されると利益を出すが、形成されなければ利益は出ない。これらの戦略の違いはリスク特性である。

移動平均線は早めに損切りすると同時に、長期的な動きをとらえようとするものだ。一般に、全トレードの30%から35%しか利益にならないが、利益の大きさは損失の大きさの2.5倍から3.0倍だ。

ブレイクアウトは、高値を更新したら買い、安値を更新したら売る戦略だ。高値と安値との差がトレードリスクになる。例えば、長期ブレイクアウト(例えば、80日)の場合、80日の高値と80日の安値との差がリスクになる。これはかなり大きなリスクになる可能性がある。一方で、価格はその範囲内のどこででも反転する可能性があり、損切りに引っかかることはない。したがって、利益の出るトレードのパーセンテージは移動平均線よりもはるかに高く、およそ60%だ。

線形回帰のリスクは移動平均線とブレイクアウトの中間で、利益の出るトレードのパーセンテージも移動平均線とブレイクアウトの中間である。線形回帰がほかの2つと大きく異なる点は、線形回帰では価格が直線を使って平滑化されるという点だ。その直線の傾きが上向きになったら買い、下向きになったら売る。

日中トレード戦略の構築

長期トレンドフォローと日中戦略の大きな違いは、日中戦略では高頻度データ(日時の価格や週次の価格ではなく、5分足や15分足)を使う点だ。

そのため、日中戦略では、トレンドではなく、マーケットノイズや繰り返されるパターン、トレーダーの振る舞いが重要になる。

日中戦略ではトレードのコストや執行のタイミングも重要だ。トレードの保有期間が短いと、コストは大きな障害になる。「成行注文」はできない。指値注文にして、システムの仕掛け価格や手仕舞い価格を打ち負かす必要がある。これはパートタイムでできるような仕事ではなく、高度なスキルがなければ自動執行する注文などできはしない。

日中戦略の構築方法は基本的にはトレンド戦略と同じだが、どの市場がトレンドアプローチや平均回帰アプローチに向くかを見極めるための追加的ステップが必要になる。

さらに、ポジションサイジング、利食い、損切り、そのほかのリスクコントロールについても考えなければならない。検証すべき選択肢はたくさんあるので、取捨選択が必要なのだ。

例えば、トレンドの方向を用いてトレードをフィルタリングすべきだろうか。これがあなたがトレードしている唯一の戦略なら、答えはイエスだ。なぜなら、トレンドは信頼性を向上させ、利益も増大させるからだ。

しかし、複数の戦略でトレードしている場合、トレンドを使えば、日中システムのパフォーマンスさえほかのトレンドシステムと高い相関を持ってしまう。したがって、この場合はトレンドは使わない。

著者
ペリー・J・カウフマン
株式とデリバティブ市場で40年以上に及ぶ経験を持つ投資コンサルタントの第一人者。著書はこのほかにも『Trading Systems and Methods, Fifth Edition』『A Short Course in Technical Trading』『Smarter Trading』『Global Equity Investing』などがある。コンピューターモデルを使って金融の意思決定を行う先駆者でもある。
出版社:
パンローリング
出版日:
2016/12/10

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