株式投資のやり方は大きく変わり、古き良き時代の「BuyandHold」(バイ・アンド・ホールド=買ったらずっと保有する投資手法)はもはや通用しない時代になりました。そしてその傾向は年々強まってきています。
アベノミクスによって上昇を見せた株式市場により、低迷していた日本株式市場は多くの個人投資家を株式市場に引き寄せ、「買っても儲からない」「損ばかり出している」「塩漬けからどう脱却すればよいか」という言葉を聞くことは激減しました。
その後はチャイナショック、米中貿易摩擦問題、新型コロナショックなどのネガティブなイベントが次々と起こり、そのたびにマーケットを揺るがす事態となっています。
上昇トレンドにある相場では誰でも利益を上げることができます。しかし、いつかは下落局面がやって来ます。したがって、上昇局面における対応だけではなく、下落局面においてリスクを管理し、逆にそれをチャンスに変えてリターンを上げられるような投資家になれるかどうかが、成功のカギを握っているのです。
これまで個人投資家が信奉してきた投資セオリーは、いい会社を見極めて投資をし、株が上がるまでずっと保有し続けるという「バイ・アンド・ホールド」のやり方でした。株式投資の王道中の王道の手法です。いったん投資すれば、あまり手間もかからないし、たまに株価をチェックしてリターンが上がっているのを確認するくらいで、比較的簡単な投資手法と言えます。
しかし、買ってからずっと保有するばかりで対応する投資手法では、結局のところ単純な上昇相場でしか機能せず、下落局面になるとたちまち「塩漬け」となってしまいます。
「新時代の株式投資」とは、相場の上昇局面だけに期待せず、「リスク管理」「デリバティブの活用」「売りの信用取引」「インバース型ETF」などの投資戦略を活用することで、本当の意味で投資を長期にわたってチャンスに満ちた存在とすることです。
個人投資家の大半が、自分の資産運用において「投資ルール」を決めていません。マイナス20%やマイナス30%、ひどい場合はマイナス50%以上という信じられない大きな損失を抱えてしまい、身動きが取れない状況に陥る最大の要因は、実は「投資ルール」がないことなのです。
「投資ルール」の最も重要な側面は「リスク管理」をきちんとおこなうことと、できる限り「リターンを積み上げる」こと。この2つの要素をきちんとした枠組みで構築するのが「投資ルール」となります。
「投資ルール」作りは、どんな投資家にも必ず必要であり、資産運用における長い時間軸の中で、パフォーマンスの向上に確実に役立ってくれるものです。リスクアセットの世界では短期的、長期的のいずれにおいてもマーケットが「常識を超える動き」を見せることが頻繁に起こります。
ネガティブな突発局面で予想を超える損失を被らない最も重要な「リスク管理」、ポジティブな過熱局面で「含み益」を取りこぼさない「利益確定」をきちんとおこなうためには、マーケットと一緒にプカプカ浮き沈みしていては成功はおぼつきません。
マーケットから資産運用に都合のいい部分だけを切り取り出すための枠組みを持つために、重要な6つのポイントは以下です。
たしかに成功している投資家(ここでは長期的目線で利益を上げている投資家とします)は全員マイルールを持っているといっても過言ではありません。
なぜ買うのか、なぜ売るのか、明確な理由を持って取引を行うことで再現性を増し、損を減らす助けとなります。
株式運用ノートを作成することはその一助となります。
「どうしてその売買行動に出たのか?」というのは非常に重要です。
なぜならば、投資行動を後になって振り返ることができるためです。振り返るだけではなく、それを次の投資行動の教訓として生かせるからでもあります。そうした行動記録を残していないと3カ月もすると忘れてしまいます。人間はあっという間に忘れてしまうものだからです。
お手軽かつ便利な世の中になったからといって、最もいけないのはスマートフォンで思いつきで売り買いして、その売買を顧みないこと。記録を残さないから、成功も失敗も頭の中で素通りして忘れ去られてしまうのです。
株式投資をおこなっている個人投資家の成績が公表されることはありませんが、そのばらつきはすさまじく大きいものです。
年間を通してみた場合、2倍以上資産を増やす人と半分以下になってしまう人がいます。それくらい大きな差がついてしまうのです。
その要因は何でしょうか?
株式投資で良い成績を収めている投資家は「株価が上がる理由、下がる理由」を知っており、その理由に基づいて投資行動を取っているのが特徴です。株が上がると考えれば買い、下がると見れば売る。
一見すれば当たり前のように思えますし、「そんなの当然だし自分もそう思って売買している」と思われる方も多いでしょう。
しかし成績の悪い投資家は、そうした理由をあやふやにしたままで投資をしているタイプが多いのです。単なるウワサやブームに乗って、買ってはいけない企業にも投資しがちです。あるいは早耳情報、雑誌やラジオで紹介された銘柄にそのまま飛びついたりもします。
しかも、すでに旬が過ぎてしまい、企業の実力値を超えて買われた反動で株価が大きく下げて損失が出ているにもかかわらず売ろうとしないのです。これでは成績の差は歴然です。
株価が上がる理由は以下です。
・景気が「回復」あるいは「拡大」という形で良い方向に動いている時
・景気を刺激する経済政策が政府によっておこなわれている時
・日銀による金融緩和政策がおこなわれている時
・海外の株式市場が上昇している時
・為替が円安傾向にある時
・国債の利回りが下がっている時
・東証1部の売買代金が3兆円を超える活発な取引がおこなわれている時
・業績が拡大している時(重要なのが本業の儲けを示す「営業利益」の動向)
・業績低迷時から脱却して業績が回復する時(赤字企業が黒字企業になるなど)
・株式市場のテーマやブームとしてもてはやされる時最初の2つは、純粋に企業業績が良くなることで評価される(利益拡大や増配は株主にとって歓迎される)が、テーマやブームは時に業績とは無関係の時があるので注意が必要である。業績を伴わない状況で株価が上がったとしても、短命に終わることが多い。
また、株価が下がる理由 は以下です。
・景気が「後退」あるいは「縮小」という形で悪い方向に動いている時
・景気に悪影響を与える「規制強化」などが政府によっておこなわれている時
・日銀による金融引き締め政策がおこなわれている時
・海外の株式市場が下落局面にある時
・為替が円高傾向にある時
・国債の利回りが上がっている時
・東証1部の売買代金が2兆円を下回るような閑散な状態にある時
・業績が低迷している時(重要なのが本業の儲けを示す「営業利益」の動向)
・大きな問題が発生した時(トップの解任、不正問題の発覚など)
・株式市場のテーマやブームではなくなった時
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タイトルどおり、本書を読めば上がっても下がっても利益を出していく方法が分かるでしょう。特に「株価が下がった時にどうするか」についてや、逆指値の考え方がしっかりとわかりやすく書かれています。株を始めたての人におすすめしたい一冊です。- 小笹 俊一 -