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不動産投資最強の教科書
鈴木 宏史
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不動産
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成功のカギは「知識」と「努力」

不動産投資には成功するチャンスはあるが、誰もが成功できるわけではなく、むしろうまくいっていない人の方が多い。では、成功する要因は一体何だろうか。それは“知識”と“努力”だ。

資産形成は一朝一夕で叶うはずもなく、「楽してお金を儲けたい!」という人には向いていない。知識や努力がない人も軽い怪我で済めばいいが、最悪の場合、大きな失敗をして人生の敗北者となってしまう。

そうならないために、不動産投資で大切なポイント「不動産投資の基本」「物件選び」「融資」「賃貸経営の方法」「投資家に必要な資質」を紹介する。

不動産投資の基本

不動産投資について興味はあっても踏み出せない人。その多くは「不動産投資が怖いもの」というイメージを持っているかもしれない。

  • 破綻したらどうしよう
  • 銀行から融資を受ける?審査が通るか不安だ
  • 満室になるかわからない

こういった不安や恐怖心の原因は、不動産投資を正しく理解できていないことにある。正しい知識とリスクコントロールの術を知れば、怖くなくなるのだ。

知識武装|正しい知識の付け方とは?

不動産投資に対する恐怖心をなくし、成功するためには知識武装が必要である。不動産投資に関する知識は巷にあふれているが、できるだけ「質」にこだわってほしい。

  • 最低限の知識を得るなら読書(1冊1500円程度なので、100冊読破しても15万円とコスパがいい)
  • 自分に合った「有料セミナー」に参加する
  • 信頼できる投資ブログやコラムを見る

「情報の質」を見極めるためには、多くの情報に触れること。ネットには無料でも有益な情報がたくさんある。しかし注意してほしいのが、無料セミナーだ。不動産業者が勧誘を目的とするケースも多いので、セミナーを受けるなら有料が望ましい。

また、不動産鑑定士や宅建などの国家資格はキャリアアップには活かせるが、不動産投資においては、それらの資格で得られた情報よりも、不動産投資の実践から得られたスキルの方が役立った。

投資スタイル|どんな物件に投資すればいいか?

「どんな物件に投資すればいいか?」は人それぞれ異なる。自分に合ったプランや投資手法を把握してから、投資する物件を決めよう。

自分に合ったプランや投資手法は「不動産投資をはじめる動機は何か?」「不動産投資でどのような自己実現をするか?」の2つをもとに考える。

「早期退職して自由になりたい」「毎月安定したキャッシュフロー(家賃収入からローン返済や経費などを引いて、手元に残るお金)を得たい」など不動産投資の動機を振り返ることは、投資プランを立てるうえでのヒントになる。

次は、その動機をもとに「目標」(将来自分がなりたい姿)を逆算し、自分が置かれている状況を考慮しながら、以下の5つの項目を考える。

【目的】ねらうのは「キャッシュフロー」?「転売益」?

【金額】キャッシュフローをねらうなら、どれくらいほしい?

【期間】求めるキャッシュフローをどれくらいの期間で得たい?

【資金】不動産投資にまわせる資金はいくらある?

【環境】自分の属性を客観視した場合、どの手法が選択できる?

これらをもとに、自分に合った不動産投資の手法を絞ることができる。「新築物件と中古物件のどちらを選ぶか?」「買うなら都心?地方?」など、下記の項目もチェックして、どのような不動産投資の手法にするか、イメージしておくといい。

【築年数】新築:低利回り/中古:高利回り

【スケール】都心:低利回り/地方:高利回り

【躯体】戸建・区分:銀行評価低い/1棟:銀行評価高い

【用途】商業系:不安定/住居系:安定

【購入手段】転勤:ー/融資:レバレッジ

【権利関係】所有権以外:銀行評価低い/所有権:銀行評価高い

信用|金融機関からお金を借りられる人間になる

知識武装と投資スタイルの確立ができても、お金がなければ不動産投資をはじめられない。多くの場合、銀行など金融機関からお金を借りて不動産を購入することになるだろう。お金を借りるには、「金融機関からの評価」が重要となる。

金融機関から高い評価を受け、融資を受けやすくするためには、次の2つのポイントを意識しよう。

(1)属性を磨く(転職、年収アップなど)

(2)金融資産を増やす(消費を抑える、副業で稼ぐなど)

属性とは勤務先や収入など、社会的・経済的信用を指す。高い属性で多くの金融資産を持っている人ほど、金融機関は「貸したお金を必ず返してくれるだろう」と評価し、融資しやすくなる。

物件選びのコツ

物件選びには2つのコツがある。

(1)満室経営できること

(2)融資が受けられるエリアであること

また、物件選びで資料のどこに目を通せば効率がいいか、もあわせて見ていこう。

満室経営|空室はお金を捨てるのと同じ

物件選びの際は、「今後、この物件を満室にできるか」を入念に調査する必要がある。例えば、家賃月5万円の物件が半年間空室なら30万円を捨てていることになる。家賃を下げたり、リフォームしたりすれば入居希望者は増えるが、そもそも賃貸需要がなかったり、物件そのものに問題があるという場合は入居者は現れない。

そうした失敗を避けるためには、物件を購入する前に現地へ出向き、地元不動産業者からヒアリングすることだ。ヒアリングすべき項目は次の4つである。

(1)対象物件のあるエリアの特徴、賃貸需要、賃借人の特徴

(2)適正家賃、敷金、礼金、広告料、キックバックの相場

(3)競合する物件の稼働率や募集条件

(4)事故物件か否か、反社会的勢力の入居の有無

実際に見て回るだけでは分からない、現地の業者しか知らない情報をうまく聞き出すことが肝心だ。

融資可能エリア|金融機関の融資できるエリア内で物件を探す

もう一つ、物件選びの際に重要なのが「金融機関から融資を受けられる物件やエリアである」こと。

どんなに好条件で、自身の投資スタイルに適した物件を見つけられても、融資が受けられなければ全てが水の泡である。特に、不動産投資の初期段階においては「物件ありき」で探すのではなく「金融機関ありき」で物件を探そう。

不動産投資に適した物件かは厳しい目でチェック

物件探しや金融機関の審査にばかりを気を取られると、ついつい資料の読み込みが甘くなってしまう。しかし、不動産投資を成功させるためには物件を厳しくチェックしなければならない。

物件情報を確認するのに役立つ2つの資料と押さえるべき項目は次のとおり。

(1)物件概要書:重要かつ基本的な情報が一覧できる書類

自分の投資スタイルに合わせて、目を通す項目は3つに絞る(著者の場合は、構造・築年数・利回り)。その物件を本格的に検討する段階になれば、違法物件の可能性にも注意し、物件情報を細部まで確認する。

(2)レントロール:賃貸借条件が一覧できる書類

日付は古くないか、入居偽装がないか、既存入居者の現家賃が割高ではないか、空室の募集家賃は適正かを確認する。

自分の投資スタイルに合った物件を探すためには、より多くの物件に巡り会う必要がある。重要な資料もチェック項目を絞ることで巡り会う物件の母数を増やそう。

自己資金ゼロでもOK?

近年、「自己資金不要」と紹介される不動産投資が散見されるが、実際にはどうなのだろうか。「自己資金はいくら必要か」「フルローンでも問題ないか」の2点について解説する。

自己資金は物件価格の20%程度を準備!

自己資金ゼロで不動産投資をはじめるのは困難だ。購入予定の物件に担保余力(精算価格>購入価格)がある場合、申込者が高い属性(年収数千万円)を持つ場合などを除いて、それは現実的ではない。

そこで、用意すべき自己資金の一つの目安が「物件価格の20%程度」である。理由は以下の2つだ。

(1)金融機関へのヒアリングで「自己資産は20%程度必要」という回答が多かったため

(2)購入時に諸費用、購入後も運営費用が発生するため

不動産購入時に生じる諸費用(不動産仲介手数料、登録免許税、司法書士報酬など)や運営費用(リフォーム代など)は自分で負担しなければいけない。これらの費用は、物件価格の7〜10%程度かかるため、自己資金は「物件購入」費用だけではなく「物件購入+アルファ」を想定し、物件価格の20%を準備しておく必要がある。

フルローンは危険か?

フルローンとは、頭金なしで金融機関からの融資のみで物件を調達すること。これなら自己資金を手元に残したまま、物件価格分をローンでまかなうこともできる。「全額ローンだと危険じゃない?」と思う方もいるだろう。

しかし、個人的には“フルローン=危険”とは思わない。フルローンでも安定的なキャッシュフローを得られれば不動産の経営は可能である(ここでは「キャッシュフロー=年間家賃収入ー年間ローン返済ー運営経費等ー空室損失」とする)。

フルローンで十分なキャッシュフローを得るためには次の4項目のバランスが重要だ。

(1)利回り(不動産の収益性)を高める

利回りが低いとそれ自体がリスクになる。フルローンで修繕や空室で突発的な支出が続くと赤字になる可能性が高いからだ。

(2)融資期間は長くする

融資期間が短いと毎月のローン返済額が高くなり、キャッシュフローが少なくなる。また、突発的な支出に耐えるためにも、まずは融資期間を長めに設定して毎月の賃貸経営を安定化させることを念頭に置く。

(3)金利は低くする

借り入れ金利の高低はローン返済額を大きく左右する。新規借り入れの際には、競合の金融機関の金利を交渉材料に、また既存借り入れの場合は決算期(3月・9月)を避けて金利交渉しよう。しつこいと融資を受けられなくなるので注意。

(4)返済比率は低くする

ローン返済比率は満室家賃収入÷ローン返済額で求められる。個人的には40%程度を目安としている。家賃の値下げによる収入減、修繕や空室といった支出にも耐えられることが重要だ。

上記4項目のバランスを考え、安定的なキャッシュフローを得られるのであれば、フルローンは恐れる必要はない。

ただし、フルローンやオーバーローンは誰もが利用できるわけではない。人物評価(高い属性と金融資産を持つ)と物件評価(物件に担保価値がある)の基準を満たす必要がある点には注意しよう。

稼げる賃貸経営の極意

不動産投資をはじめられたとしても「稼げない」と意味がない。安定的な賃貸収入には満室経営が必須条件であり、適切な運営には優良な管理会社が欠かせない。

満室経営のコツ!コントロールすべき要素4つ

人口減少が進む日本だが1年後に半分に減るわけではないのだから、入居者に選ばれる条件を満たせば満室経営は狙える。

満室経営を実現するために気をつけている4つの要素を紹介する。

(1)家賃設定:相場より低めに設定する。競合と差別化することで自然と空室がなくなる

(2)リフォーム:物件自体の競争力や室内の状況を見て行う。基準として、原状回復は3000円/平方メートル、リフォームは6000円/平方メートル、フルリフォームは9000円/平方メートル

(3)広告料:物件紹介の優先順位を上げるために支払う。目安は家賃の1〜2ヵ月

(4)敷金・礼金:どちらもゼロにして入居者のハードルを下げる。入居者の初期費用を下げて、心理的・経済的な負担を軽減

最終的には、管理会社などから入念なヒアリングをしたうえで、費用対効果が最良となるよう検討しながら進める。「どうしたら入居してくれるか、入居者に選ばれるのか」という視点を養おう。

管理会社の選び方!優良な管理会社を選ぼう

優良な管理会社が見つかれば、遠隔地の物件であっても十分に運営可能だ。オーナーとして足繁く物件に通う必要はない。

管理会社の選定は、物件のエリアの特性・実情をもとに決める。

地方では「ある業者が圧倒的なシェアを持っている(独占状態)」や「2〜3社がエリアを牛耳っている(寡占状態)」ケースが多いため、その地方の商習慣や業者同士の関係性などに配慮したうえで管理会社を選定したい。

これらの情報は物件購入前の地元不動産業者へのヒアリング時に、把握しておこう。

さらに、満室経営や経費削減のため、「オーナーの他社営業(他社でも物件を紹介していいか)」「リフォームの自主発注(オーナーがリフォーム業者を選んでいいか)」を過去の経験から重要視している。こうした条件も認めてくれる柔軟な管理会社を選ぶことが、安定的な賃貸経営を続けるための秘訣となる。

養うべき3つの資質と目標

投資には不安や恐怖心がつきものである。不動産投資にいたっては、莫大なお金を動かし、長期的なローンや先行き不透明な将来などとも向き合い、絶対的な保証がない道を進む。

しかし、不動産投資として成功するためには一歩ずつでも進んでいかなければいけない。そこで大切なのが「投資家」として考えられるかどうかだ。「サラリーマン脳」から脱却し「投資家脳」へと変換しよう。

これまでの実績から、不動産投資家として成功するために養うべき3つの要素を挙げる。

(1)判断力:優柔不断はチャンスを逃す。即断即決できるような知識と自信を身につけよう

(2)行動力:頭で考えるだけではダメ。まずは自分で行動しよう

(3)胆力:億単位の借金に耐えられるような勇気と度胸を持とう

資質を養うだけではなく、「無理だと思うような高い目標」であっても写真を見たり紙に書いたり、やるべきことを具体的なイメージにすることが大切だ。

あとはやるべきことを行動に移す。この簡単なことをやるかやらないかの小さな差が、人生を大きく分けるのかもしれない。

著者
鈴木 宏史
鑑定士×投資家/「楽待」人気コラムニスト。現在は不動産鑑定事務所を経営するなど活躍の場を広げている。
出版社:
東洋経済新報社
出版日:
2018/10/05

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