不動産投資の「嘘」に惑わされず、投資で成功するためにはポイントがあります。全国の投資用不動産の売買を行う会社を経営し、これまで5000人以上の投資家に対して、資産形成のコンサルティングを行ってきた著者が、「購入」「運営」「出口」の3つの段階において、騙されやすいポイントを解説した本書から、「購入編」にスポットをあてて紹介します。
実際の融資では、高利回り物件=融資が通りやすいという単純な法則はありません。融資をスムーズに受けるには、あくまでも銀行の審査基準をしっかりと把握することが肝心です。物件に対しての評価はもちろん、投資家自身の属性や資産背景も重要なのです。物件評価額はあくまでも一つの指針ですから、あまり固執しないほうがいいと思います。
銀行にとって好ましい投資家の属性は、まず「年収と金融資産がある」人です。基本的には一定の世帯年収がある人を好みます。また大事なのは、「既存の借り入れ状況」です。銀行によって属性に対する融資基準が違うので、銀行ごとの融資基準を常に把握して、使う順番や使い方をしっかりと計画するべきです。
年収1000万円以上の属性があれば、わざわざ金利の高い銀行で借りなくても、メガバンクや地方銀行など10行ぐらいはいけるのではないかと思います。また、年収が1000万円以下でも一定の条件が整えば、融資を受けることができる銀行もあります。物件によって使える銀行は複数あり、個人の資産背景、購入予定の物件内容によって使える銀行は変わってきます。
銀行をリサーチする方法は、まずホームページなどで投資向けローン商品を確認し、ピックアップします。そして、不動産業者や投資家から各銀行の特徴や審査基準などを聞いてリストをつくっていきます。そうすることで自分に一番適した銀行はどこなのか、おおよそは把握できると思います。
不動産投資は物件を買うことよりも、事前にしっかりとした市場調査とシミュレーションをして、融資の戦略を練ることが重要です。マーケットを見極める力を身につけた上で、自ら物件や銀行を選ぶということを肝に銘じておきましょう。
不動産投資で気を付けたいのは、業者の煽りを真に受けて、借り換えを前提にムリな融資を組んでしまうことです。よくありがちなのは、物件の買い付けが殺到しているなかで「〇〇銀行でないと間に合わない」と不動産業者から煽られるパターンです。金利が高いので躊躇していると、「何年かしたら借り換えればいいんですよ」という決まり文句で後押ししてきます。これは初心者の投資家が陥りやすい「嘘」です。本来の目的=お金を増やすことを忘れてしまい、気が付くと「買うことだけ」が目的になっている悪いパターンです。
利回りが良いので購入したが、蓋を開ければ空室だらけ。高利回りは嘘だった──そんな話をよく耳にします。長期的にはその高い家賃は見込めないにもかかわらず、甘い見込みをもとに表面利回りを上げているケースがあるのです。
「真実の利回り」は、修繕費やランニングコスト、固定資産税・都市計画税、保守点検費用などのコストを差し引いたNOI(営業純利益)で計算します。そして、物件を判断する利回りは、表面利回りではありません。真実の利回りであるFCRで判断するようにしましょう。
こういったことは、投資家自身もしっかり把握する必要がありますが、本来は売買仲介する不動産業者がしっかり提示するべきです。購入を煽ることばかりを言って、諸費用・月々の固定費用について、しっかり説明しない業者であれば、そこは「嘘つき」とはいわないまでも良い業者ではありません。自分自身で、前述の表面利回りではなくFCR(真実の利回り)で物件を判断することをおすすめします。
FCRとは、かかるコストすべてを差し引いて計算した最終的な利回りのことを指します。フリーアンドクリアリティリターンの略で、「真実の利回り」のことです。NOI(満室賃料から空室分を差し引いた実行総収入から、運営費用を差し引いた営業純利益)を物件価格(諸費用含む)で割ることで算出できます。日本の不動産投資の場合、数あるポータルサイトやそこに掲載されている広告では、表面利回りが掲載されていますが、アメリカなどではFCRで書くのが通常です。
何をもって「キャッシュフロー」とするのかは、本来、不動産投資の指標では明確にされていますが、不動産業者や有名投資家によっては間違った説明をしています。業者によっては、経費が全部抜けた計算(満室賃料-ローン返済額)で出した「キャッシュフロー」をいっている場合も多く、それを鵜呑みにしていると、実際はそんなに残らないということが起こります。
正式にいうと、NOI(営業純利益)からローン返済額を差し引いた後に残った金額が税引き前のキャッシュフローです。しっかり突き詰めて計算すると、表向き高収益、高利回りに見えても、本当は高利回りではない物件はたくさんあります。また、税金に関しても、試算しない業者が多いので注意しましょう。
自身の成功体験をもとに、本を出版している有名投資家さんは数多くいますが、その投資法は再現性があるのでしょうか?カリスマといわれる投資家のなかには、今のようにサラリーマンが簡単に融資を借りられない状況のなか、自らの手で銀行開拓をして買い進めていた投資家も多いのです。借りられない状況だからこそ、良い物件が安く買えている、そんな事情もあります。そのやり方をそのまま真似ても、うまくいく可能性は低いと思います。また、年収や金融資産、家族構成や背景もまったく異なります。大口の顧客だからこそ叶う低コストも存在します。物事には、必ず理由があります。それが「その投資家だからこそ」「その時代だからこそ」といった特別な事情であれば、「再現性はない」と判断するのが賢明です。
有名投資家のやり方をそのまま真似しないことが大切なのです。一人ひとりの属性と目標が違うため、現実的に真似することは不可能だからです。自分で情報収集した結果として、同じことをやるというのは有効だと思いますが、信用してすべてを丸投げするのは本当に高リスクです。最終的には必ず自己判断で行いましょう。
不動産のプロといえば、宅地建物取引士が有名です。しかし、宅地建物取引士は不動産売買や仲介に関する専門家の資格であって、不動産投資の専門家ではありません。信用に値する会社というのは、営業マンは全員、宅地建物取引士の免許を持っていること、かつ主要メンバーが不動産投資専門の資格を持っているような会社だということです。
投資用不動産の専門的な資格といえば、CPM®とCCIM®があります。分かりやすく説明すると、不動産投資のプロ資格で、不動産投資の経営をコンサルティングできる資格です。アメリカが発祥で、世界各地で講習と試験が行われていて、世界で通用する資格といえますので、学ぶ価値はすごくあると思います。CPM®でも十分な知識を得られますが、自分で投資をするのであれば、CCIM®まで取っているといいかもしれません。
会社内の主要な人たちがCPM®を持っている会社。そこはおそらく、専門的な提案ができる会社だと思います。そういった資格を持つ業者に相談するのが間違いないでしょう。
エリア選定において重要なのは、「賃貸の需要と供給が合っているか否か」ということです。一概に都心だからといっていいわけではありませんし、地方だからといっていけないというわけでもありません。
地方の特徴としては、マーケット自体は、都心に比べたら小さいかもしれませんが、本当に詳しく調べると、需給がいいエリアもあります。そこでしっかり賃貸の需要と供給がマッチしているのであれば、地方でも不動産投資として成立しているわけです。
自分が購入しようとしているエリアがどんな地域なのか、需要と供給のバランスや人口などは、しっかり自分で調べるべきです。実際のところ、地域の需要というのはさまざまで、物件タイプによる需要と供給のバランスというのもあります。ファミリータイプの需要があるのに、供給が少ないエリアや、逆に大きな団地があってファミリー向けは余っており、単身者向けの需要があるエリアもあるのです。一つの側面で判断してはいけませんし、誰かの言うことをそのまま鵜呑みにするのも避けたほうがいいでしょう。
本来は、このデータを出すのも、不動産業者の仕事です。CPM®資格を所持したプロがいる会社では、こういったデータをすべて提供します。そうでない会社で物件購入する場合は、自分でしっかり調べる必要があります。
同じ市や区でも駅単位、町単位で見ると差があるのが賃貸マーケットです。エリア分析は、市の単位で調べる「地域市場」から始めて、次に「近隣市場」、最後に「対象物件の特徴」と3段階に行っていきます。広いエリアから狭いエリアに狭めていって、最終的に対象物件とライバル物件に焦点を定めます。大事なことは、人口ではなく世帯数を見ること。これが居住系不動産分析において必要なことです。
また、最低限、過去のデータと現在のデータを見て、未来を予測することをおすすめします。プロで
あれば、「レインズ」という業者間の情報ネットワークがあり、そこで成約事例を見ることができます。投資家であれば、「アットホーム」「スーモ」といった不動産ポータルサイトを見ることで、募集物件数、賃貸相場も把握することができ、リアルタイムのデータを見ることができます。なかでもおすすめは「ホームズ」のオーナー向けサイト「ホームズ不動産投資見える!賃貸経営」です。空室率から賃貸相場などさまざまなデータが出ています。平均値となるため正確なデータではありませんが、需給バランスを見るための参考にはなります。
そのようにインターネット上で、築何年の物件が、いくらぐらいで募集が出ているというのを見ていくと、過去にどれくらいの家賃で入居が決まっているのか、どのようなスペック(仕様)の物件に競争力があるのかといったものが把握できるようになります。同じ地域でも、ピンポイントで家賃や需給は違ってきますので、実際にその物件の周辺を自分で調べます。そして、現在までのデータを把握することで、今後の需要を分析することができます。
未来のことは誰も分かりませんが、過去と現在のデータから家賃や時価を予測することができます。ここまでに調べたデータから、現在の相場で10年後どうなっているかを予測して、そこから楽観と悲観で3パターン程度考えることを提案します。
事例として、利回り8%の新築木造アパートを購入するときの出口を予測します。
10年後に売却を想定した場合、売却額はどのように予測していくかというと、現在の市況では同じエリアの同じような仕様の築10年の中古木造アパートが利回り9%で売りに出ている(もしくは成約事例
がある)ことから、まずは10年後の売却時の利回りを9%で設定して、今の市況よりも良かった場合(楽観相場)の利回り8%と今の市況よりも悪かった場合(悲観相場)の利回り10%で想定します。
もちろん家賃の下落率もデータを参考に設定して、10年後の家賃(年間家賃)を利回りで割り戻すと、売却額が出てきます。さらに、10年後のローンの残債なども合わせてみて、投資として収益性を見るわけです。このように事前にシミュレーションを行うことで不確実性=リスクを下げることができるのです。
多くの間違いは、物件探しから入ってしまうために起こります。高利回り物件を買いたいということで、インターネットで物件を探すと地域が限られる傾向にあります。そして、この物件に対して、融資可能な銀行は限られてしまうのです。本来であれば、その投資家の資産背景、属性によって使える銀行は変わりますが、初めから一つの銀行に絞られてしまうのは、今後の買い進めに影響が出ます。
不動産投資は事業なので、最初に融資戦略をしっかり立てることが肝要なのです。その融資戦略を考えると、立地に関しては銀行によって絞られてきますので、「このエリアに投資したい!」というこだわりはなくてもいいということです。どちらにせよ、必ず市場調査を行うところから始めるのが基本です。
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