短期金利がマイナス0.1%、長期金利は、0%と超低金利時代が到来している日本。実をいえば日本に限らず、この状況は人類史上で初の低金利環境にあるのです。なぜこのような低金利に見舞われているのかというと、原因のひとつは主要国の中央銀行が行ってきた金融政策にあります。とりわけ、リーマンショック後に日米欧の中央銀行は、前代未聞の金融緩和政策を積極的に行い、悪化する景気を支えました。
低金利の方が、「お金が借りやすくなる」「企業活動や消費が増える」など、メリットが多く見えますが、実はそうではありません。なぜなら企業が延命し、ゾンビ化してしまうと、新しい企業が育つ土壌が失われてしまうからです。経済の自然なサイクルは、非効率性の企業が淘汰され、新しい企業が誕生することです。景気縮小を遅らせようとしたり、なくそうとするとゾンビ企業が大量に生まれ、新しい企業やサービスが生まれなくなるのです。
主要国が長きにわたって異次元緩和を進められたのは、緩和しても消費者物価が上がらなかったからです。しかしコロナショック以降、世界は厳しい景気悪化とインフレに見舞われました。インフレが発生すると同時に、各国は次々と引き締め政策を行います。引き締めを行った結果、緩和で膨らんだ資産バブルが破裂してしまったのです。未だにバブルの崩壊は収束しておらず、緩和のやりすぎの後遺症はしばらく続くといわれます。
これを踏まえ、現代はデフレの時代からインフレの時代に突入したことがわかります。インフレは、現金をそのまま置いておくと価値が目減りする性質があります。インフレ時代を生き抜くためには、まずメンタルを変えないといけません。デフレ脳からインフレ脳への“転換”が必要です。「資産運用」するためには、まず「資産保護」をする必要があり、インフレと同程度に資産を増やす方法を習得しなければならないのです。
今後の日本経済を、「会社四季報」2023年1集をベースに予測すると結論からいえば、2023年の日本経済の見通しは“明るい”です。全体的なトレンドも来期増益率は「上振れ」する形となり、強い相場が見込めますが、とりわけ日本経済は「どの国よりも強い」と言われています。IMF(国際通貨基金)のGDP予想、その他の独立金融機関、OECD(経済協力開発機構)の予想によれば、日本が先進国の中でもっとも強い経済成長率を打ち出すとされているのです。
とりわけ注目すべきは、「新興市場」です。新興市場の増収率・増益率は合計よりも水準が高く、また来期に向けての増益の勢いも新興市場が「V字加速する」でしょう。2022年12月までの「3カ月」株価パフォーマンスを見ると、東証G市場指数がプラス14.8%。マザーズ指数がプラス5.2%と共に中小型株優位な展開となったのです。ではなぜ新興(中小型)の業績がよいのにも関わらず、株価が上がっていないのでしょうか? それは日本の個人投資家の人たちが、新興(中小型)の優良銘柄を探し込めていないことが原因です。今後、東証グロース市場の相場が大きく動くのではないかと予想できます。
「日本経済の見通しは明るい」とされますが、それは一体、どんな理由からでしょうか? 答えは、「日本流」にあります。物価高騰を背に、日本の企業は社会全体におよぶ影響を慮り、できる限りコストを吸収しようとします。従業員に関しては、雇用を確保しようと努めます。このような日本ならではの特性が、“強み”として表れたのがパンデミックでした。欧米が高インフレに見舞われた原因は、利益がちょっとでも落ちると、値上げ、リストラに動く米国企業の風土でした。便乗値上げの物価高と便乗リストラを強行したそのつけが、結局は米国社会に大きな弊害をもたらしたのです。そんな中、日本だけが企業エゴを最小限にとどめ、最小限の物価高に抑え込んでいます。
この“日本流”が功を奏し、パンデミックという難しい局面でも、高インフレにならずに済んだのです。中国の極端な行き過ぎた統制主義と、米国の極限資本主義の間ぐらいで、日本流が再び評価される局面があるのかなと思い抱いてきましたが、そろそろ日本の出番がやってきたのです。「今後、日本企業の若い経営者たちに、この“日本流”が引き継がれていくのか?」については、今の若い人たちは共同体意識が強いため懸念材料にはならないでしょう。ミレニアル世代やZジェネレーション世代の方が、コミュニティ意識やWE意識、「わたしたち」という意識が強いので、“日本流”は脈々と受け継がれていくのです。
日本は過去30年で、大きく市場シェアを失った分野がいくつもあります。中でも「半導体」は顕著で、90年代、世界の約3割を占めていたにも関わらず、現在は1割ほどに落ち込んでいます。しかし、すべての関連技術が失われたわけではありません。パワー半導体や、半導体製造装置など、関連分野では息づいているのです。日本は、誰も知らないような無名企業が世界でも有数の技術力を持っているので、盤石な地位を陣取っているのです。これらを踏まえると、日本の未来を悲観する理由はありません。今後、世の中がAI化、省人化していくなかで、日本はそこをリードできる可能性が高いのです。
AI化、省人化が進めば、生産性が高まり、少子高齢化も懸念材料ではなくなるのです。起爆剤としてのさまざまな技術的進歩は期待されており、コロナ禍で、無人化、自動化、AI化を加速させました。無人化・自動化・AI化の流れが急速に進むいま、技術面、国民性、人件費、為替などを総合的にふるいにかけると、現時点で日本ほど、世界の中で投資に有利な国はないと思われます。これからは、日本に海外企業の巨大プロジェクトが流れ込み、サプライチェーンが日本に回帰するのです。
「日本のサプライチェーン回帰」といったシナリオによって、景気の復活、賃金上昇、デフレからの脱却が期待されます。技術的な優位性を保ち、最終的には日本の好景気は、日本の株式市場の追い風となって、世界で再び注目を浴びるでしょう。この流れにより、日本に投資が集まり、日本の株式市場は活気を取り戻すのです。今後、日本に眠っている個人資産の11%しか向かっていない株式シェアが30%まで上昇。日本の株式市場は盛り上がって、日経平均は上昇するでしょう。構造的インフレの時代、貯金だけでは価値が減ります。これからは日本人自身も日本株に興味を持ち、日本株を資産として持つことです。
日本人が日本株を買うことで、外国人が刺激を受け、さらに日本株に注目が集まるでしょう。この相乗効果が重要です。なぜなら日本のバブル崩壊以来、外国人で日本株を専門にしている人はほぼ皆無で、投資しようにも情報も知識も中途半端、お手上げ状態が続いてきたからです。中国株のリスクが取りざたされる中、先の「相乗効果」によって、再び日本株が注目されます。すると、欧米人の日本株の専門家が育ってきて、さらに日本の情報が増えれば、世界が日本に投資しない理由はなくなるでしょう。これはごく自然な流れで、法則的な循環であり、すでに動き出しているものなのです。
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