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金利を見れば投資はうまくいく
堀井 正孝
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経済社会
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知識・教養
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金利は「炭鉱のカナリア」

みなさんは、炭鉱のカナリアという言葉をご存知でしょうか?

カナリアは周囲の異変にとても敏感で、常にさえずっているにもかかわらず、危機を感じると鳴きやむという習性を持っています。

昔、炭鉱労働者は坑道に入る際に3羽のカナリアを鳥かごに入れて持っていき、いずれか1羽が泣き止んだら「炭鉱内にガスが発生か、変調が起きている」と察知していました。

カナリアは一種の警報として使われており、危機を回避するために使用されていたのです。

金融におけるカナリアというのは、ずばり「金利」です。表面化していない景気の変調を理解し、投資家にとっての力強い味方になってくれる指標なのです。

金利はリーマンショックでもいち早く反応

世界金融危機とも呼べる大規模な株価下落。こうした状況は、メディアで騒がれる高騰や下落だけで語られがちです。

しかしながら、炭鉱のカナリアである金利はそれよりも早く警報を上げます。

たとえば、2009年に発生したサブプライムローン。米国10年金利を見ると高値をつけたのは2007年6月。対する株式は10月につけています。逆に景気回復局面は2008年12月に金利が底値となりましたが、株式の復調は2009年3月まで待ちます。

好景気の真っ只中にいても、2006年から住宅価格の陰りが深刻な事態を引き起こすトリガーとなることに金利がいち早く反応していたのです(同時期の住宅価格も景気回復局面でありながら低迷したままでいたことから見ても金利が警報となっていることがわかると思います)。

最低限見ておきたい3つの金利

政府や中央銀行が発表する経済指標。今後の変化を知る上で、金利、景気、雇用などの要因を数値化していて、指標として大切です。

しかしながら、経済指標から景気判断をするのはなかなか難易度が高いです。その理由は以下の通りです。

①発生時期が遅い(発表時と比較して過去のデータである点)

②何度も修正が入る(速報から改定、そして確定と数値修正が存在します)

③分析に時間がかかる(景況を判断できる材料ではあるものの、指標を使い分け、分析する技術を要する専門的なデータであること)

本書の推奨する金利には、それらの課題がありません。

①日時でデータが出るという速報性

②データが改定されないという確実性

③今を反映しやすいというシンプル性

だからこそ金利を見て学ぶべきなのです。

さて、では数ある金利のうち最低限理解し、定常的にその動きをチェックすべきものは、どれでしょうか?

政策金利(短期金利)

まず、景況の予測において重要なのは政策金利。短期金利のなかの1つの指標です。

中央銀行(米国:FRB、日本:日本銀行等)が金融政策によって市場金利を誘導する目標となる基準金利です。

もうすこし分かりやすく解説をすると、一般にある銀行(みなさんが普段よく利用される銀行をイメージすると良いでしょう)に対して中央銀行(日本だと日本銀行、通称日銀です)が融資を行っています。その際に受け取る金利のことを指します。

この中央銀行は、金融政策とよばれる景気を安定的に拡大させるために市場に出回るお金の量(通貨供給量)を調整しています。

景気が良ければお金の流通量を減らし、少ない時には増やす。お金が借りやすくなれば、それを使って企業は設備投資を行い、個人は家や車などの大きな買い物をしてくれます。

この短期金利の変化により、政府がどのような景気にしたいのか基準が見えてくるのです。最初に紹介した、預金による金利もこの利上げや利下げに大きく影響を受けます。

10年国債利回り(長期金利)

短期金利と合わせて頭にいれておきたいのが長期金利です。長期金利とは、一般的には期間が1年以上の金融資産の金利をいい、10年国債利回りは、長期金利の指標の1つです。

さきほどの短期金利は期間が1年未満を指すのに対して、長期金利は1年以上のものを指し、国が10年間の利率を決め発行する債券を指します。

難しい要素が絡むと思われがちですが、基本的に流通利回りは色々な要素(発行者・価格・利率・期限)が盛り込まれているため難しく考える必要はありません。

この10年国債利回りは景気の影響を受けます。通常、長期金利が短期金利を下回ると景気後退のサインとされ、逆の場合は景気が良くなる予兆とされています。

中長期的に資産を増やそうとした場合、企業業績の成長度合い以上に、景況で一律上昇や下落が起きる場合もあります。だからこそこの10年国債利回りにアンテナを貼っておくことが重要なのです。

社債利回り

さきほどの長期利回りの発行者が企業版が社債利回りです。企業は銀行から資金を借りて投資を行うだけでなく、個人投資家や投資銀行を相手にして資金調達を行う場合があります。それが社債になります。

このときの社債の利回りはそれぞれの企業が期間やタイミングに合わせて設定しているため通常は異なります。

国よりも信用度が低くリターンが大きいのが企業の発行する社債です。ざっくりと理解しておきたいのは利回りは企業の信用度により左右されるということです。

たとえばA社は順調に成長しており、5年後にもより大きな企業になる期待値があります。対するB社は、市場が小さくなってきており新たな成長産業へリスクのある投資を行う予定です。このとき利回りが高いのはB社になります。なぜなら、貸したお金が返ってくる可能性がA社よりも低いからです。

金利が低くなっていたら、信用度が高く全体景況が良くなっている状況。逆であれば、倒産リスクを含めて景況が悪い状況という理解をしておけば良いでしょう。

景気回復局面では長期金利から反応する

先ほどの短期金利と長期金利を組み合わせると、景気の状況がわかってきます。

これは日本の四季とよく似ており、寒くなった後は暖かい日がやってきて、逆に暑くなる夏のピークを過ぎるとだんだんと秋がやってくるという形です。

このとき景気が良くなってくると指標としてまず動き出すのは長期金利です。

その後短期金利が上昇していきます。というのも短期金利は国全体の金融水準を左右してしまうこともあり、今の状況ではなくこれからどうなるかがちゃんと見えてから実施されるのです。

本当に景気の底が見えたのか、逆に今の景気がピークなのかを見据えて行なっていくということを理解しておくと指標の理解は進むはずです。

著者
堀井 正孝
元SBIボンド・インベストメント・マネジメント(株)代表取締役。 国内有数である先進国債券ファンド「グローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)」元運用責任者。
出版社:
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
出版日:
2022/05/27

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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