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2025年日本経済再生戦略
成毛 眞
冨山 和彦
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経済社会
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成毛「迫り来る100%自己責任時代」

2017年7月のある新聞記事によると、後期制度(75歳以上の後期高齢者が入る医療制度)に対して、現役世代の加入者を中心とする企業の健康保険組合などが負担する支援金が膨れ上がっているといいます。つまり現役世代が後期高齢者の社会保障のかなりの割合を負担しつつあることが問題になっているのです。

65歳以下の年代では、何十年も支払った額よりも少ない年金しか受け取ることができなくなっており、今でも厚生年金を含めた平均年金受取額は、14万円台という状況です。実質的な破綻は起き、インフレが進めば老後の月額年金は現在の1万円くらいの価値に下落する恐れすらあるほどです。

人口は減少し、構造的衰退国家にある中、ビジネスパーソンは徹底的に節税しながらセカンドビジネスで所得を増やし、金を節約して投資する以外に老後をまともに過ごすことは期待できないのではないでしょうか。現世代は、したたかに自分の身を守りながら、自分なりに楽しく幸せな人生をつくっていくことを考えた方が良いでしょう。

冨山「経済危機でも倒産が少ない日本」は逆に危ない

一人ひとりの日本人が個人の力を身につけ活かしていこうとするとき、やはりそこでも壁として立ちはだかるのは新陳代謝が固定化した産業構造や社会構造です。古い産業構造に身を置き学んでも、新しい力は身につきません。

長年に渡りSTEM教育が大事と言われながら相変わらずIT人材が足りない、AI技術者が育たないと嘆いている原因は、そもそも人材教育や投資が古い構造に固定化されていることに起因しています。画一的な教育システムではなく個人が、個人の学ぶ力を身に着けることを求められているのです。

時代の移り変わりによって付加価値を生み出す力を失った古い産業構造の中、古い組織のルール、古いお作法の中では、個が輝くのは難しいです。そうした中、古い産業構造が固定化して居座りを決め込めば、新しい付加価値が芽吹き大きく成長するスペースはなかなか生まれません。

ちなみに、2008年のリーマンショックのような経済危機が起きても、打撃の割に日本で倒産する企業は世界に類を見ないほど少なく、直近のコロナ禍においても同一でした。

倒産する企業が少ないと、良いことのように思えますが、背景には巨大な支出をして倒産を回避しているだけということもあります。原因は何であれ、稼げない企業が淘汰されるのはビジネスの理なのです。

そういう意味で倒産企業が少ないということは、長期的な経済発展という観点からは決して歓迎すべきことではないのです。企業群が倒産しないことにより、古い産業がゾンビ化したまま生き残り、産業構造の固定化が進んでしまう傾向があります。

政府のバックアップに依存するゾンビ企業達は生き残り、人間には戻りません。生産性の低い企業が利益を上げる本来あるべき企業として蘇るのではなく、生産性の低いまま延命してしまうことが現代の課題です。

20世紀の時代は、長期間に渡り平時がつづき「有事はない」という前提で社会や法律が作られてきました。しかし、そんな平時がつづくことの方が本来は異常で、いつでも有事が起こりうる通常の状態に戻ったのです。

国自体の有事に対する丸腰は恐ろしいほど変わりにくいもの。平時前提のなかで、大人しく行儀よく出世してきたエリートにとっては、自己の自由裁量で有事に対峙することや、戦略や仕組みを考えることは実は苦手なのです。

結果、かなりの確率で手遅れとなり、気づいたころには財政破綻という可能性もあるでしょう。だからこそ、一人でも多くの日本国民は政府に期待せず、伝統的な政治家や役人、さらには企業経営者に期待しないで行動指針を決めることが大事なのです。

かの福沢諭吉の名言「国を支えて、国を頼らず」は、現代においてますます輝きを増しています。政府に頼らない行動を示すことが、むしろ彼らに危機感を与えて変えることや救うことになるのです。

成毛「最低でも2回転職せよ」

自分にあう業種や仕事というのが合うか合わないかは1社働いただけではわからないものです。合う仕事に出会えれば、モチベーションも上がりますし、仕事の効率も高まります。むしろ最低2回は転職を行うことを推奨する方が、社会のために良いのではないでしょうか。

1社だけに縛り付けられてがんじがらめになるより、知らない職場に行き人間の幅を広げるべきです。また、転職すべき理由は、合う仕事を見つけるという目的だけではありません。新しい環境にいけば、自分のダメダメな部分が露呈して、気づきを得ることができます。失敗すら、楽しむことが大事なのです。その気になれば、副業でバイトだってできるのですから挑戦すべきです。

転職をしないことのデメリットも存在します。それは、優秀な人が大企業に入り、20年もすると視野狭窄(きょうさく)の昭和的なサラリーマンになる傾向があることです。

その原因の一つとして挙げられるのは、退職金制度。ローンで家を買うときなど、この退職金を組み込んだりしてしまうためどうしても会社から逃れられません。結果、自己保身に走るしかなくなるのです。

むしろ政府主導で人生最低二回の転職をスタンダードにすべきで、もっと自由にビジネスの世界を回遊できる環境があるべき姿です。社会にとっても人材流動性が高まり、昭和の価値観で凝り固まった大企業病を打ち破ることにつながるはずです。

決して会社に帰属して、組織でしか生きていけないようなガラパゴス人材にはなってはいけません。直属の上司や組織の理論で何かが決まってしまうような硬直化した組織にいると、途端に保身や組織のロジックで物事を考えがち。むしろ企業では、力をつけて成果を積み上げ、ヘッドハンティングされていくような実力をつけるための場所と考えた方が正常な考え方です。

定年まで、とにかく大過なく過ごしたほうが安全だの無難だのと考えているのなら、今すぐその認識を改めた方が良いでしょう。自己責任な時代はもうすぐそこにきているので、組織にしがみついて保身に走っている場合ではないのです。

冨山「新しい資本主義に頼らないことが新しい資本主義だ」

国とは個人の集合体であり、豊かさをブレークダウンしていくと当然個人の豊かさにいき着きます。昭和的なみんな横並びで突き進んで、みんながちょっとづつ幸福に収入を増やしていくといった価値観はなくなり、自己責任で動く時代へと変化しました。終身雇用制度が定着したのは戦後であり、そうなる以前は個人は会社に対して縛り付けられる存在ではありませんでした。結果、格差なく現代では皆が豊かさに向かって進んでいっています。

しかし、日本において昭和のシステムや価値観がイノベーションを阻害し、才覚や発想がモノを言う知識集約時代に対応できず、経済や国民全体が相対貧困化を引き起こしてしまっているというのが現状です。

その結果、皆総所得がほとんど増えずむしろ減っていき、政府も貧しくなっていく。再分配に回す余裕もないため、増えない所得から爪に火を灯すように倹約を行い、消費や投資は増えない。日本はお金が回らない、持続性もない状況となってしまいました。

もっと人々は自分勝手にいくべきです。既存の昭和モデルに縛られず、政府や会社のせいにしないで、自由に選択をしていく。その選択をできるために、仕事に対する自分自身のスキルを合理的な努力で鍛え上げることがまずは大切です。

これからは「いかに生きるか」ではなく、「いかに好きに生きるか」に人生の軸足を変えるべきではないでしょうか。

著者
成毛 眞
元日本マイクロソフト代表取締役社長。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。
著者
冨山 和彦
経営共創基盤(IGPI) グループ会長・日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役社長
出版社:
SBクリエイティブ
出版日:
2022/04/29

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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