本書では、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏と実業家の堀江貴文氏が、お金の貯め方・増やし方、向き合い方を紹介しています。本書は以下4章で構成。
第1章 お金の貯め方
第2章 お金の増やし方
第3章 お金の稼ぎ方
第4章 お金と人生
ここでは本書より一部内容を抜粋して紹介します。
「そもそもお金とはどういうものなのか?」あらかじめお金の本質を理解することで、本書の理解が深まる。
(堀江)ときにあなたに充足感をもたらし、ときに心配やトラブルの種にもなってしまうお金。お金は「信用の数値化」にすぎない。ということは実はいくらでも代替可能であり、お金がなくても人は生きていける。お金を持っていることと、信用を持っていることは、かぎりなくイコールなのである。
(山崎)あなたを信用する仲間さえいれば、お金はいらない。信用があれば、お金がなくてもいろいろなことができる。逆にお金があれば、信用のない間柄でもいろいろなことをしてもらえる。つまりお金は自由を拡大する手段である。あくまでも数値と手段にすぎず、目的ではないから、徹底して合理的に扱うべきなのである。
(堀江)製造原価がわずか17円の1万円札に1万円の価値があるのは、日本銀行がその価値を保証しているからにほかならない。信用がお金をもたらし、お金が信用を増幅させる。それが世の中のお金の仕組みである。
(山崎)お金はなんでも数値に換算して評価する。たとえば、より高い報酬を得るのは、世間に評価される、より大きな貢献をしたからだと考えることができる。すると、より大きな収入を得ている人は、社会にとってより価値の高い人なのだという連想が生じる。
そして、お金は数値なので、他人と比べやすい。嫉妬や競争意識が、手段に過ぎないお金を目的する。お金には生存とプライドに強く働きかけ、感情を揺さぶる厄介な性質がある。
(山崎)すでに発生してしまった損失をいまの時点では取り返せないコストとして認識したものがサンクコストだ。これは人間の心にとって厄介な存在。非合理的な選択をしないために、起きてしまった損は意識的に棚上げして忘れることにして、意思決定の時点から改めて先を見ながら損得を計算することをつねに意識しよう。人生ではこれから変えられることについてのみ努力する価値がある。
運用を始めるにはいくらかお金が要る。正しい節約を知り、当たり前だと思っている支出を見直すことで、運用や人生の投資に回せるお金が増える。また、老後2000万円問題に象徴される、お金に関わる老後不安の問題をここで解決しておく。
(山崎)2019年、「老後2000万円問題」が日本中を騒がせた。この2000万円は、あくまで一例の家計から算出した金額に過ぎず、老後にあなたがいくら必要なのかは、結局自分の数字で計算しないとわからない。老後に必要な資金を簡単に計算できる式を作ったので、ネットで「人生設計の基本公式」と検索してみてほしい。
老後に必要なお金の計算はざっくりで問題ないが、寿命を短めに見積もることは絶対に避けたほうがいい。平均寿命からプラス10年くらい寿命を長く見積もっておいたほうが無難である。ほぼ100歳まで生きることを想定しておくといい。
(堀江)不安を煽るニュースにいちいち振り回されてはいけない。つねに冷静に判断し、正しい情報を見極めることが重要だ。厚生労働省は人口構成の変化を見越して、定期的に年金制度を改めている。いまの現役世代の人たちは将来、年金の受給開始年齢の選択肢がさらに増えるかもしれないし、受給額の調整もあるかもしれない。また現在年金を受け取っている人よりも支給額が減る可能性もなくはない。でも年金制度が破綻することはあり得ないし、年金は確実にもらえる。
(山崎)年金の本質は節税可能な貯蓄と長生きするリスクの保険だ。しかもその保険料には各種の税制優遇が用意されている。また、公的年金は終身で支給されるため、自分が思っている以上に長生きした場合でも年金を受け取ることができる。国が用意した有利な仕組みとして合理的に付き合うといい。
(山崎)良い節約を3原則にまとめると次の通りになる。確実で、ストレスがなく、実害が小さい。
良い節約の定石は、固定費を見直すことだ。固定費はたった1回の決断で出費が確実に減る。まずは、生命保険料や通信費やムダなサブスクを見直して減らしてみることが先決だ。家賃も上手く減らしたい。
(山崎)日々の出費を可視化すると節約がはかどることがある。だが、いちいち家計簿をつけるのは煩わしいので、クレジットカードの明細を活用しよう。いつも使うクレジットカードをなるべく1枚に集約すると支出の管理がシンプルになる。
ところで、世の中には現金主義の人がまだいるが、これからはキャッシュレスが普及する。基本的にはキャッシュレスで生活し、利用明細を使って支出を管理したほうが節約ははかどるだろう。
(堀江)カードを使うメリットは、出費管理のしやすさだけではない。クレジットカードには、ポイント還元のサービスがついている。実質的に1%オフで買い物ができる。自己投資であれ運用投資であれ、その浮いたお金は足しになるはずである。
(山崎)貯金のコツは、いくら貯めるかを決めておき、月々その額を天引きすることだ。天引きすると暮らしていけないと思うようなら、稼ぎ方か使い方のどちらかに問題がある。
(山崎)保険に加入してもいい典型的な状況は、一家の働き手が突然なくなってしまったときに、残された家族が路頭に迷う場合のみである。相続に生命保険が役立つ場合があるが、加入が必要なのは「貯金がなく、子供がいる家庭」くらいだと取りあえずは覚えておこう。どうしても必要なリスクヘッジを、必要最小限の金額と期間で購入するのが正しい使い方である。保険とは「まったく付き合わない」という選択肢も含めて、合理的に付き合うべきだ。
(山崎)どうしても生命保険に加入しなければならないのなら、ネット生保が有利な場合が多い。そして「少額」「掛け捨て」にする。すでに積立型保険などに入ってしまっている場合は解約手数料がかかる場合があるが、サンクコストは無視し、判断するタイミングでベストな選択を合理的に行おう。
(堀江)もし自分が死んだとき、妻や子供が保険会社からお金をもらうのではなく、お父さんの仲間たちから手を差し伸べてもらえるような環境を作っておくことも立派な保険だ。保険会社にお金を使うくらいなら仲間たちに使おう。良好な人間関係に勝る保険はないと思う。
(山崎)がん保険はいらない。医療費が一定額を超えると、公的医療保険の高額療養費制度が利用できる。
(堀江)残念ながら、生命保険や医療保険は、災いを避けてくれる魔除けのお守りではない。いざというときは公的医療保険制度が使えるのだから、そっちはそれで十分だ。
(堀江)マイホームは不条理な買い物だ。マイホームを買ってしまうとライフスタイルの変化に対応できない。ライフスタイルは刻々と変わる。ライフスタイルが変われば生活空間も変わる。維持費もかかるし、リスクしかない。
(山崎)マイホームは単純に投資対象と考え、計算して得なら買う、損なら買わなければいい。持ち家か賃貸か、この問題への結論はケースバイケースなため、一概に断言することはできない。あくまで損得勘定で判断するとよい。
(堀江)日本には家を買ったら一人前、といった風潮が根強く残っているが、このようなマイホーム信仰が蔓延しているのは国策の影響である。マイホームもマイカーも、そうとうな維持費がかかってコスパが悪い。プロパガンダによって作られた謎の同調圧力に振り回されず、自由に生きればいい。
(堀江)人々は超低金利で銀行にお金を貸し、しかも時間外のATM利用で手数料を取られている。せっせと口座に預ける余裕があるなら、経験貯金を積んだ方がいい。お金は使って初めて意味をもつ。キャリア、知見、人脈、その形成のためだったら有り金は全部使ってもいいとすら思う。
(山崎)堀江さんのスタンスは人的資本という観点から考えるとわかりやすい。人的資本とは、将来の稼ぎを現在価値で評価した、いわば人間の株価のようなものだ。
堀江さんの人的資本は豊かで、十分な流動性まである。信用が大きく、お金を引っ張ってきたり、他人を巻き込む力がある。なにかがあればお金を調達できる力は、お金を持っていることに極めて近い。だから堀江さんは有り金を全部使っても大丈夫なのだ。
他方、人的資本が小さい人は、お金などの形で金融資産を多少は持っていた方が安心だという現実がある。現実の信用は100か0か、ではない。あなたの信用に合わせて、お金はほどほどに持てばいい。
(堀江)時間的価値の高い若い時に貯金に勤しむなんて大いなる機会損失である。やりたいことがあるなら借金してでもやろう。余計な手間を省き、一気に次のフェーズに進もう。
(山崎)堀江さんは起業家を例に出したが、読者にとって身近な借金は、たとえば奨学金だろう。
良い借金には3つの原則がある。(1)借金の金利より高い収益が見込める(2)返せる見込みがある(3)金利がリーズナブル
借金をしている限り確実に金利が取られる。そう考えると、借金返済は「無リスクで市中金利以上の金利のリターンが稼げる運用」だと考えることができる。ただし、現在借りているローンの金利が安い場合は例外だ。繰上げ返済しなくてもそのぶんを運用に回すことで特になるケースがある。あくまで原則として、「返済に勝る運用なし」と覚えておこう。
世の中には、役に立たないお金の運用方法が多数紹介されている。こうしたインチキに引っ掛からずに済むように、合理的な運用方法をコンパクトに紹介する。
(山崎)やるべきことは超シンプル。投資信託という運用商品の中で、インデックス・ファンドを選ぶ。いまならeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)という商品を選ぶといい。
そして運用ではなにに投資するかだけでなく、どこで運用するかも重要。つまり運用するお金の置き場所だ。置き場所として断然、得なのが「iDeCo」「つみたてNISA」「一般NISA」である。この3つはどれも税制優遇制度を受けられる。運用に回せるお金は、手数料が安い全世界株式のインデックス・ファンドに投資しよう。
株式投資の本質は長期間持っておくことだ。お金に働いて稼ぐ時間をたくさん与えるのがいい。また、リスクを分散して管理するのが投資のセオリーだ。まとめると、投資を上手くやる原則は「長期・分散・低コスト」だ。
年齢によって運用商品を変える必要もない。インデックス・ファンドはたしかにリスクがある。しかし、ほとんどの場合、運用を躊躇するほどのリスクではない。現役世代だろうが老後だろうが、運用する人の属性は関係ないのだ。若くても高齢でも、もっとも効率の良い同じ運用をすればいい。
お金の使い道によって運用商品を変える必要もない。学資保険のような商品は、運用方法と使う目的を過剰に対応させすぎている。お金の運用方法はシンプルな方法を1つだけ覚えておけばいい。
iDeCoへの掛け金は全額所得控除になる。課税所得となる所得がある人であれば、iDeCoを優先的に、そしてなるべく大きな額で運用するべきだ。
老後の備えとして手取りの2〜3割を運用しようとすると、iDeCoではすぐに限度額を超えてしまう。つみたてNISAや一般NISAを併用しよう。課税所得がない場合は最初からNISAを選ぶほうが使い勝手が良くなる。
インデックス・ファンドは値上がりするかもしれないし、値下がりするかもしれない。その不確実性があるからこそ、無リスク運用より高いリターンを期待できる。リスクは回避できない。より高いリターンが期待できるからといって、貯金のほぼすべてを運用に回すのは危険だ。最低限、3〜6か月分の生活費を生活防衛資金として確保しておきたい。
運用商品の売り時は多くの人が悩む点だが、お金が必要になったとき、必要な額だけ売ればいい。お金は使うためにある。
(山崎)仮想通貨は投機であり、長期の資産形成には向かない。
(堀江)代表的な投機には、仮想通貨のほかにFXや金投資、商品先物取引がある。FX投機で、つまるところ合法ギャンブルだ。バイナリーオプションも投機である。
(堀江)もっとも大きなリターンが期待できるのは、自分で事業を始めることだ。
(山崎)堀江さんの言うとおり、起業こそが大金持ちへの近道だ。ストックオプションや自社株の付与制度、社員持株会(従業員持株会)などを上手に使うこともまた、お金持ちへの近道。
(堀江)投資の利回りは5%を超えたらいいほうだ。でも自分で商売をやって上手くいけば5%なんて誤差に思えるくらいのお金が入ってくる。失敗したら大変?ほんとうにそうか?借金は合法的にチャラにできる。失敗してもゼロに戻るだけだ。
人生を豊かに暮らすためにいちばんウェイトが大きな要素は稼ぎ方だ。稼ぎ方について、そのスタイルが大きく異なる2人が、働き方・稼ぎ方について惜しみなくお伝えする。
(堀江)会社は「他人を利用するための仕組み」だ。得意なことに集中し、ほかは誰かに任せよう。そうやってあなたの武器(技術とキャリア)を磨き上げる。会社に属するメリットはそれに尽きる。
(山崎)会社に雇ってもらっているという一方的な関係はダメ。会社員であっても「個人商店」感覚で働く。会社は「大口の契約先の一つ」と考える。自分の「人材価値」に敏感になろう。
(堀江)「自分のコアバリュー」は早期に明確にしよう。早期に定めれば、そのぶん自分のバリューをたっぷり高められる。
(山崎)ほんのわずかな差が「評価」と「収入」を大きく変える。その差を作るためには時間の使い方を工夫する。人よりもたくさん調べ、たくさん工夫をし、知識を喜んで吸収する。没頭できることでないと、勝ちにくいのだ。
(堀江)最後にものを言うのは「運」だが、運は他力本願ではない。幸運はやり抜いた人にだけ訪れる。
(堀江)仕事道具に出し惜しみしてはいけない。仕事道具は高価でも良いものを使ったほうがいい。下手な運用商品より有益な投資になる。
そして自分のための時間は徹底的に確保するべきだ。他人の時間を生きる必要はないのだから、電話をかけてくる相手とは距離を置いたほうがいい。
職住近接のメリットは計り知れない。1日の中で頭がもっともクリアになっているのが朝である。
(山崎)合理的な行動をするために、自分の「時間の値段」を計算してみる。すると、普段の行動ひとつひとつの潜在的コストがわかる。そしてなにが合理的な行動なのか判別できる。
(堀江)良質な睡眠と仕事のパフォーマンスは直結する。睡眠の時間コストを惜しんではいけない。睡眠時間の確保は元手なしで誰でもできる投資だ。
人生にはお金よりもはるかに大事なことがたくさんある。筆者2人の考えとは。
(山崎)地位財の追求をどこかで降りないと、幸福感が遠のく。地位財のラットレースを続けているかぎり、資産は増えにくいし、家計は圧迫される。
年収1000万円を境に、幸福感は頭打ちになる。高い所得が必ずしも高い幸福感をもたらさないという事実が明らかになっている。
幸福は大きく分けて自由の拡大と他人の承認によって成り立つ。他人の承認はお金ではあまり解決できない。
(堀江)お金持ちになろうが、やれることが限られている。お金持ちになることと、人生の楽しさはまったく別で、実際ひととおりやってみたら「こんなものか」で終わりだ。
(堀江)お金よりも多様性のある人間関係を築こう。多様性はあなたに、新たな発見、ノウハウ、流動性をもたらしてくれる。狭い世界にいると、高い人的価値は形成できない。お金よりまず、多様な人間関係を作ろう。
(山崎)お金は人間関係のために有効に使うことができ、他人のために使ったお金はやがて自分に戻ってくる。割り勘なんかせず、おごり合おう。
(堀江)お金は裏切らないと息巻くような人間はつまらない人間だ。つまらない人間は孤立する。困ったらまず人に頼ればいい。
多くの人が生活水準を落とすことに強い抵抗感を持つのは、単に見栄の問題だ。いざ生活水準を落としたところで実質的な困苦は何もない。見栄さえ張らなければ、お金の不安は消える。
(山崎)人間の最大の罪は不機嫌である。いつも上機嫌でいるために、お金とは淡々と向き合おう。お金は単なる手段だ。もしお金で損をしても、「お金で済む問題でよかった」と開き直ればいい。
仕事、人間関係、住居、家庭生活、時間。そういった事柄について、それぞれ普通よりも少しずつ自由を積み上げること。日々を快適なものとし、経済的にも悪くない、組織人でも実行できる人生のコツだ。
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