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いま君に伝えたいお金の話
村上 世彰
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資産形成
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お金とは何か

お金は、道具です。それと同時に、人間の身体でいう血液のようなものでもあります。身体に血液がめぐらないと困ってしまうのと同じく、社会にとっても不健康を引き起こします。

現在の日本社会の調子がいまひとつな原因は、このお金の巡りがわるいことが理由の一つです。

日本人全体で1800兆円を超えるお金が存在しますが、そのうち半分以上が銀行口座やタンスに貯蓄されています。これは個人だけでなく会社にとっても同じ状況で、堰き止められてしまっている状態です。使うことによって、社会がより大きくなって巡る。その正常な状態とは逆になってしまっています。

お金は、貯め続けるだけでは、やりたいこともやれません。でも、全て使ってしまったら困った時に立ち行かなくなりますし、人を助けるような使い方もできなくなってしまいます。

大切なのは、お金を知り、良い面と悪い面と付き合っていくことです。豊かな生活を得るためにお金に縛られたら本末転倒ですし、お金をたくさんもらえる仕事につけたら、もらえない仕事を下に見てよいわけではありません。自分なりの「幸せ」に対する「ものさし」をつくることです。

そのために、まずやるべきことは「とにかく考えること」です。

お金については、誰かが答えを教えてくれるものではありません。本当の答えは何か、人それぞれにあり、習慣的にお金について考えつづけることが大事です。

考えるきっかけは身近な場所に落ちています。あなたの部屋にあるもののほとんどは、お金という対価で得たモノでしょう。スーパーに行って商品の値段を見て考えてもいいでしょう。新幹線のチケットもそうです。グリーン車のチケットを買えば5000円高くなります。その差額を、「時間」で切り取ったら無価値、「快適」で切り取ると価値があるのか。

たとえば尺度として、自分の働きと比べてみても良いでしょう。お金をモノやサービスと物々交換する際に、それが君の何時間分の働きと交換されているのか。本当にそれに払うだけの価値があるのか。考える習慣をつけることで、お金の輪郭が見えてくるはずです。

お金を稼ぐための方法

好きなことを仕事にして稼ぐ

お金は稼いで貯めて、そして回して稼ぐ。その流れが大切です。最初の稼ぐ部分では、仕事から始まります。もちろん、世の中には無数に仕事が存在しています。ただ、どのような職業を選択しても、人生に大きく影響を与えます。ひいては、君自身の幸せも左右します。できることなら好きなことを仕事にすると人生が楽しくなります。

なぜ好きなことを仕事にした方がよいのか。まず、どんな仕事でも本気で集中してやれば面白くなるのです。ですが、自分の好きなことの方が「面白く」「集中できる」状態に入りやすくなります。現在好きなことがある人であれば、それにとことん集中して仕事につなげていけばいいと思います。逆に好きではない仕事であったり、そういったことがすぐに見つからなかった人は、今の仕事に対して全力で取り組む経験も大切です。一度そういった全力でやり切った経験は、人生の糧になります。

また、ただ好きなことに取り組んでも長続きしないこともあります。なぜなら仕事については、お金の問題を軽視できないからです。たとえば、俳優などがイメージしやすいでしょう。演技が好きで仕事にしたくても、最初からスターになれるわけではありません。

好きなことがすぐに仕事につながらないのであれば、他のことで収入を得ながら頑張るといったことも選択肢の一つです。大きな夢に向かっていく覚悟を持ち、貧しいことや稼げないことに対して悲観せず、夢にむかっていくことが選択肢になり得ます。

稼いだお金を増やすために

第一段階として、ただ目的もなくお金を銀行口座に貯め込むのではなく目的を持って「貯める」ことから始めましょう。私は、40歳になって役所を辞めてファンドマネージャーとして独立するまで、貯めて回して増やしてきました。辞めるまでのお金は、ファンドを始めるために「貯めて」きました。

お金こそが、お金を産む金の卵です。貯めれば金の卵になって、人生の局面ごとに力を発揮してくれます。だからこそ、まずは目的を持つこと、そして貯めることから始めましょう。

リスクとリターンを学ぶ

大人になってすぐのときは、給料が少ないのに出ていくお金が多いです。生活費にほとんど消費してしまうことでしょう。貯めるには、仕事で収入が安定してきたなと感じた時がおすすめです。7割を生活費に、1割を趣味のお金、そして2割を貯金に回してみましょう。

ただ貯めるといっても、銀行に貯金するだけではあまり大きなお金となってくれません。場合によっては低い金利に対して、お金の価値が落ち価値が減ってしまう状況となり損をしてしまうこともあります。

そうしたときに、投資が一つの選択となります。

投資の代表格の株の場合は、大きく利益を上げることもあれば、価値が半分になり、場合によってはゼロになってしまうことがあります。これが、投資した以上にお金が戻ってくる「リターン」と、投資したお金が減ってしまう「リスク」です。リターンが大きいものは、リスクが大きく、逆もまたしかり。

将来的にどのぐらい増やしたいのか、そのためにどの程度のリスクを取ることができるのか(どのぐらいのお金がなくなっても平気か)をよく考え、自分にあった配分で投資をする。もしくはしないと決めていくことが大事です。

投資と期待値

僕の元には、「投資のリスクが低く手っ取り早くお金を増やす方法はないのか?」というリクエストがよく来ます。しかし、そんな近道や魔法は存在しません。何事も自分で考えて数字でとらえるクセをつけることが大事です。

その際、僕が大事にしている考え方が「期待値」です。

100円である株をかったときに、将来的に3倍の300円になる可能性と半分になる可能性はどのくらいなのか、自分なりに一生懸命考えて、期待値を割り出します。

<例>

・100円の株が300円になる可能性 10%

・100円の株が50円になる可能性 90%

期待値=3×10%+0.5×90%=0.75

結果、期待値の基本が1のため期待値が低いということがわかります。

逆に3倍ではなく10倍に価値が高まった場合を計算してみましょう。

<例>

・100円の株が1000円になる可能性 10%

・100円の株が50円になる可能性 90%

期待値=10×10%+0.5×90%=1.45

結果、期待値の基本が1のため期待値が高いということがわかります。

この期待値の数字に正解はありません。株式であれば、企業の成長やマーケット、従業員数などの数字を把握し自分で考えて割り出していくことが大事なのです。

これは、投資において債権や土地などでも同じ考え方で導くことができます。また、この「期待値は人生のほぼ全て」に応用することができます。

たとえば生命保険に入る時、君が保険を利用する可能性がとのくらいあるのか。保険に入らないリスクは貯蓄で回避できないかなど。キャリアアップのために勉強するときも、かかる費用以上のリターンを得られるか。その可能性をより高めることはどうやったらできるのか。

さまざまな場面で、この「期待値」は使える考え方なので、ぜひ試してみてください。

著者
村上 世彰
投資家。1959年大阪府生まれ。1983年から16年強にわたって国家公務員として通産省(現・経産省)に務める。独立後、1999年から2006年まで投資ファンドを運営。現在、シンガポール在住。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)などがある。
出版社:
幻冬舎
出版日:
2018/09/06

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