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普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門
山崎 俊輔
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資産形成
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そもそもFIREとは

まずは、FIREに関するおさらいです。FIREは経済的独立の獲得による早期リタイアを目指すムーブメントになります。大まかには、十分なお金を得て、その運用益などで30代、40代での早期リタイアを目指すのが一般的です。

一部では怪しい金融商品のセールストークとしても利用されてしまっていますが、老後2000万円問題をきっかけに、長期的な備えを行うことの重要性に多くの人が気がつき始めました。

ただ、海外版FIREの情報をそのまま知ったとしても、日本での活用は難しいです。というのも、既存のFIRE本ですとアメリカの401(K)の話がそのまま入っていたり、個別株式投資などのテクニックが中心となっているからです。

早期リタイアの落とし穴

30代後半、あるいは40代前半という早い時期でのFIREは憧れますし、夢がありますよね。しかし、そう簡単でもありませんし、思わぬ落とし穴が存在します。

ひとつ目の問題は「早期引退し働かないで取り崩した場合、年金受給開始年齢までの間、資産が持つかどうか」という計算の不確定要素が大きいということです。これは、早期引退すればするほど、その不安が大きくなります。

もうひとつが現実的に社会人人生の前半だけで2倍稼ぐことができないという問題です。普通の人が65歳まで43年間働くとして、22歳から45歳までの収入と、それ以降の収入どちらが多いでしょうか。スキルがつきキャリアが熟すときに獲得する賃金の方が自然と大きくなるのは自然なことです。

そうした背景もあり、50歳代でのリタイヤが現実的ではないでしょうか。体力や活力を残しつつ、仕事を離れて邁進することができるわけです(40代と比較して取り崩すお金と必要なお金も減るわけです)。

ではどのように実現するのか。それは、お金に本気で向き合うということです。

ドライに高い年収を狙え

仕事にはお金以外の価値も存在します。でも、働きがいはしばし搾取されるものです。この会社には私を雇ってくれたという恩義があると思うあまり、自分の能力に見合う給料をくれない状況を見過ごしている人買います。

他社に移れば100万円年収が上がるといった市場価値を持っているにもかかわらず、転職をあえてしない。そういった状況は端的に言い換えるのであれば、働きがいを求めるあまり代わりに「年100万円安くこき使われていた」ということです。

本気でFIREをしたいなら、年収が優先です。早くリタイアしたいのであれば、稼げる年収を確実に、少しでも多く稼ぐことが優先です。能力があるのに評価が低いというのは、単なるあなたの能力のムダ遣いでもあります。

会社をやめると、迷惑がかかるという視点があります。でもそれは、働けなくなったとき、人がいなくなったときに会社を回せないという、体制のほうに問題があるのです。会社の心配をしている時点で、やりがい搾取されているのです。

また、年収を増やすというのは既婚者であれば夫婦で実現も可能です。例えば、共働きの場合2人で400万円であれば合計800万円になります。経済的な豊かさを実現できるのではないでしょうか。しかも、順調にお互いキャリアアップしていけば、600万円+500万円で合計1000万円という大台を超えられるはずです。

貯めたお金をいかに増やすか

年収を増やし、節約をすることで次の段階へと進めます。それは、口座に入ったお金を運用していくということです。高い利回りを実現すれば、資産はどんどんと増えていきますから、FIREの実現までも近づいていきます。

しかし、高い利回りというのは本当に実現可能な数字なのか、というのは考慮が必要です。高い利回りには高いリスクがあり、短期的に回復不能な値下がりを食らう可能性を背負うことになります。

・初期元本(年収を高め増やしていく)

・定期積立額(できる限り支出を減らして増やす)

・積立投資期間(無理をしない期間で設定する)

・運用利回り(ゴール優先でシュミレーションしてはいけない。高いリスクは取らないこと)

税制優遇上、有利な口座は活用

資産形成を志すのであればiDeCoとNISAは抜きには出来ません。証券投資はリスクがあり、売却時には約20%の課税ルールが存在します。税制優遇のあるアカウントを優先的に活用し、アセット・アロケーションを意識して投資を行いましょう。それこそ、満額利用での積立を行うことも現実的ではないでしょうか。(ただし、中途解約は難しく60歳より早くは受け取れないと考えておきましょう。)

FXとFIRE

投機と呼ばれるものとFIREは相性が良くありません。

たとえばFX。日本ではFXの個人取引が世界でも有数の規模にあります。小さな元手で大きな売買ができ、100万円あれば2500万円相当の外貨を取引できますから魅力があります。

しかし、FXにチャレンジした人の半数は損失を抱えており、利益を上げている割合は31%しかないと言われています。しかも、1年以内での投資撤退が69%と、勝てる可能性が非常に低いです。

こうした投資は、知識や経験値がものを言いますから、はじめたら負ける確率が非常に高いのです。しかも、投資資金が少ない人ほど撤退せざるをえません。ある程度潤沢に資金がある人であれば、一時的な損失を抱えても様子を見る余力がありますが、そういった人はそもそも利回りリスクが高すぎない投資を行っています。

FIREできたからといって終わりではない

いざあなたがFIREを達成できたとしましょう。ハイペースに入金しなければいけなかった、お金に対するしがらみから脱すると定期的な出金という構図になります。しかし、FIREの実現ができたと仮定しても、それで終わりではありません。

資産運用状況の管理というのは達成後も常に意識していく必要があります。積立投資が行われなくなるということは、それ以降の資産はだんだんと減少してきます。市場の価格は常に一定ではありません。時に、急落してしまったとき、積立中であれば「今が安く買えるチャンス」「市場の回復を待つ時間的余裕」といった要素がなくなります。

FIRE生活を達成するまで10年、ないしは20年の投資をしていると急騰と急落を何度も体験しているはずです。そうした場合、短期的な急落時に焦らず立ち回ることを学んでいるのではないでしょうか。

できたらFIRE時に積み立てていった投資口座からは切り崩しを一旦やめ、定期的な預金の方からお金を取り崩していくことを意識しましょう。

またFIRE後に働くということもまた否定的な生き方ではないはずです。外出をして人と話すことはひとつのストレス解消にもつながります。趣味を生かして会社員ほどでないにしろ稼げれば、投資資産の取り崩しのスピードも減速させることが可能です。

また、会社員をするにしても給与ではなく残業がない、働くことの楽しさや職場環境を意識して選ぶということも選択肢となり得ます。FIRE後にあえて働き続けるという選択肢だって十分アリなのです。

著者
山崎 俊輔
AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。
出版社:
ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:
2021/07/16

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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