私は父は教員、母は専業主婦という家庭に育ちました。学生時代から学級委員や部活動の長をする経験が多く、それでいて、人の顔色をとても気にする子でした。
「キャリアウーマンみたい」そんな短絡的な理由で出版社へ就職。しかし、安直にその道を選んだ私はすぐに違和感を覚えるようになりました。そして流されるまま、入社3年目で結婚・出産して出版社を退職します。専業主婦になり、穏やかな時間が流れていたのですが、まさかは突然やってきたのです。
結婚して3年目、子供が3才の時に離婚することを決めました。人の目を気にしてばかりいた私は離婚してシングルマザーとなり、娘をどう育てていくか、その想いだけでその時は立っていたと思います。
教員免許を持っていた私は人に教えることが好きで、OAスクールや職業訓練校でパソコンを教える仕事を始めました。
するとある日、職業訓練校の生徒さんから「パソコンができるようになりましたが、本当は何がしたいのかわからないんです」と釈然としない顔で言われたのです。
それを見て「進路を決められない人が多いんだ。仕事や進路をアドバイスできたら、もっと生徒さんと深く関われるのではないか」と思いました。そして、CDAキャリアディベロップメントアドバイザーというキャリアカウンセラーの資格を知ります。
それから、キャリアカウンセラー養成の講座に週に一回通うことにしました。
講座の中で「クライアントの力を信じる関わりとは何か」を考え、「支援者としてのマインドを整える」うちに、「誰かに正解をもらうのではなく、クライアントが自分で生き方を決めることができたら納得感のある力強い人生になるはず」そう強く確信したのです。
同じ時期に、NLP(神経言語プログラミング)に出会います。
「クライアントには力がある!」その前提で関わるNLPに魅せられ、こちらも夢中になって学びました。そして私はキャリアカウンセラーであり、NLPの使い手として対人の仕事を深めていこうと決意したのでした。
皆さんは近しい方に対して、複雑な感情を持ったことはないですか? 私も友達に対して「私のやりたいことに付き合ってくれて嬉しい」と思いつつ「なんで私のやり方に合わせてばっかりいるんだろう」とイライラしたりというようなものです。
クライアントさんの悩みでも、対立する感情に戸惑いを感じている方が多いです。ある社長さんはコーチングをした際に「部下に去られた」と喪失について語ってくださいました。
「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ」と憤慨しながらも、次の瞬間トーンダウンして「とにかく寂しいんだ」とつぶやいていました。
このように我々の中には「複数の感情」が出たり入ったり、時に混在することもあるのです。
私たちは「この感情が私の感情だ」と思ったもの以外の感情が出てくると、それをネガティブに捉え「生きづらくさせる感情、消えてしまえ!」と思ってしまいます。
しかし、そう思えば思うほど、それらの感情は、あなたの中に居続けます。心に浮かぶ感情や、〇〇をさせるものをNLPでは「パート」と読んでいます。実はパートと上手く付き合うこともできるのです。
NLPでは「肯定的意図」という考え方を大切にしています。
例えば、寝坊する人には「寝坊させるパート」がその人の中にいるのですが、「寝坊させるパート」も宿主のあなたを思って肯定的な目的で動いていると考えるのです。
「寝坊するパート」の肯定的意図を丁寧に確認して行くと「私の健康のために動いてくれているんだ」と受け取れます。そんな考え方やスキルがNLPの中にはあるのです。
次は「皆さんの譲れない軸」を考えていこうと思います。
実際、キャリアカウンセリングやコーチングでお会いする皆さんは「自分のことがよくわからない」とおっしゃいます。「考える機会もなかった、必要もなかった」と口にされる方がほとんどです。それが突然「退職後のことを自分でコントロールしなさい」と会社に問われて反感と戸惑いを感じる方も多いのではないでしょうか?
キャリア支援の第一の目的は、クライアントさんに「自分を理解してもらうこと」です。自分のことが分かっているから「自己選択」ができ「今後の道を決められる」のです。
様々なキャリア理論やツールがあるのですが、今回は、マーク・サビカスの「キャリア構成インタビュー」をご紹介します。サビカスは「語りの中にその人が現れる」と強く謳った方です。
「キャリア構成インタビュー」は質問に答えてもらう形式で「その人の中にあるつながり」を見つける手法です。
質問は以下の5つです。質問の意図も併せて紹介します。
1.少年・少女時代に誰にあこがれ、尊敬していましたか? その人について話してください。
⇒ロールモデルを確認するためです。
2.何の雑誌をいつも読んでいますか? いつも見ているテレビ番組はありますか? その内容について教えてください。
⇒興味ある環境や活動を知るためです。
3.今、本や映画で好きなストーリーは何ですか? どんなストーリーでしょうか?
⇒答えた内容には、自分の転機の結果を想定するために使うストーリーがあります。
4.あなたの大好きな名言・格言はなんですか?
⇒自分自身に与えるアドバイスです。
5.幼い頃の思い出は何ですか? 3歳から6歳までに起きたことについて教えてください。
⇒幼い日の囚われを聴くことで、現在の問題やキャリアについての心配事をどの視点から見ているかわかります。
この5つの問いに答えるだけであなたの経験や考えが見えてきます。
次に「あなたのミッション」を考えることについてお話します。
「何を使命として生きているのか?」「どこに向かっていくのか」が分かったら、ミッションに向かってエネルギーを集約できるのでやってみましょう。
NLPにはニューロ・ロジカル・レベルという考え方があります。これは人間の意識や学習レベルを次のように6段階に分けたものです。
1段階「環境レベル」
場所や時、所属会社など
2段階「行動レベル」
どんなふうに行動しているのか、何をするのか
3段階「能力レベル」
何ができるのか、どのような能力や知識、経験を持っているのか
4段階「信念価値観レベル」
信念や価値観、その人が大切にしているもの
5段階「自己認識(ミッション)レベル」
自分は何者か、どのような役割や使命を持っているのか
6段階「スピリチュアルレベル」
個人としての意識レベルを超えた「自分が属するより大きなシステム」の一部としての認識
6つのレベルのどれかを変えることによって、その他のレベルにも変化が表れます。例を挙げましょう。
資格試験に挑戦しようと考えていた鈴木さん。勉強用のレンタルスペースを借りたところ、そこには意識の高い人たちが集まっていました。その方たちに影響され「試験に合格できない自分」ではなく「試験に合格できる自分」に自己認識が変わり、試験は一発合格。「環境」レベルを変えることで「自己認識」が変わった例です。
今どのレベルに影響を受けているのか? どのレベルについて考え、変えればいいのか? ニューロ・ロジカル・レベルの考え方を知っておくことで自分のミッションを確認でき、そこに向けエネルギーが湧いてきます。
終わりに
「自分とは」「自分の譲れないものとは」「自分のミッションとは」この3つが分かっていればそれを船の錨として生きていきやすくなります。人生100年時代には他人ではなく、自分のことをより良く知ることが大切です。
他者との相互作用の中で生きているから、自分のことより、他者と協働することだけ考えればいいのでは?と言われることもあります。しかし、誰もが自分を丁寧に扱うからこそ、他者への興味関心も高まっていくと思うのです。
自分の中にある複数の感情を丁寧に扱うと「統一感のある自分」を保つことができ、「自分を慈しむこと」ができます。
皆さんの中にある譲れないものを見つけようというお話もしました。それを知っておくだけで生きる意味は変わり、これからの変革の時代に何が起きようと腹をくくって生きていけるでしょう。
「自分を大切にし、譲れないものを知り、ミッションを知る」ことは皆さんが他人の顔色をうかがうことなく、自分らしく生きて行くために、ひいてはもっと人生を楽しむために必要なことです。
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