皆さんは「お金には価値がある」と考えていますが、その「価値」とは何でしょうか。
お金自体を食べることは出来ませんし、乗り回せるものでもなければ、笑わせてくれるものでもありません。しかし、そのお金を使えば食べるものを買うことが出来たり、電車に乗ることも出来ます。
このように、お金は「使う」ことで初めて価値が生じるものなのです。ここまでは、誰もがわかることだと思います。ここで、とても大事なポイントを紹介します。それは、「お金は使うタイミングによって価値が大きく変わる」という点です。この言葉には大きく分けて2つの意味があります。
1つ目は、「そのときの自分が置かれている状況によって、お金に感じる価値は変わる」ということです。
人は「金銭的に潤っている時よりも困っているときの方がお金の価値を感じる」のです。だから、「タイムスリップをして潤っているときの自分から、困っているときの自分にお金を渡すこと」が必要になってきます。
2つ目は、「時間をかければかけるほど、お金は急速に増えていく」ということ。これは投資をすることで得られる利息の「複利」の効果についてです。
複利とは、利息を元本に足していくため、最初に投資したお金だけでなく、その利息に対しても利息が付いていくこと。これに対して、元本にのみ利息がつくことを「単利」といい、長期で運用した際に単利と複利では大きな差が生まれるのです。
例えば、100万円を年間10%の利益率(年利10%)で運用した場合を見てみましょう。単利の場合は200万円ですが、複利の場合は259万円にもなります。投資期間が長くなればなるほど、この差は大きなものになっていくのです。複利は、資産を形成する上で大きな助けとなります。
「お金を持ちたい」ということは、裏を返せば「貧乏になりたくない」ということでもあります。
貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があることを知っていますか?
絶対的貧困は、最低限の生活基準が満たされていない状態を指します。一方、相対的貧困とは、その国の文化的・経済的水準を下回る生活をしている状態を指すものです。
僕のように先進国で暮らす人は絶対的貧困になることはあまりありません。でも、相対的貧困に陥る可能性は常にあります。日本の相対的貧困率は15.7%になり、全人口の約6人に1人が相対的貧困の状態にあるのです。
人の安全を守る制度などを「セーフティーネット」と呼びますが、網(ネット)だったら穴から漏れてしまうかも。だから、セーフティーネットじゃなくて、穴のないセーフティーブランケット(安全毛布)を作らないといけない。お金の基本を学ぶことも、セーフティーブランケットを作る上でとても大事なことなのです。
「お金が欲しい」と思った時、投資などの「増やし方」に目がいくよね。でもそれより前に「お金の守り方」、つまり節約を覚えないといけない。「節約なんて回りくどい」と思っている人は、「節約こそが一番確実な儲け方」だと今すぐに考え直しましょう。
英語のことわざに「A penny saved is a penny earned.(1円の節約は1円の儲け)」というものがありますが、今でも僕はこの精神で、いかにお金を節約するかを考えています。
まず、投資を始める前に「そのうち資金」と「エマージェンシー(緊急事態)資金」という2つのお金を用意して欲しいです。
「そのうち資金」というものは、明日の電車賃や、来月の家賃、来学期の子どもの学費などのお金を指します。つまり、そのうち使う予定のあるお金のことですね。
次に「エマージェンシー資金」は「仕事を失った!」「大病をした!」「自然災害にあった!」などの万が一の事態に備えるためのお金です。
「そのうち資金」と「エマージェンシー資金」を準備できたら次は賢く借金返済をしましょう。
借金返済には投資と同じような効果があります。なぜなら、1章で学んだ「複利」が借金にはかかってくるからです。
複利は味方につけると最高だけど、敵になったら最悪。例えば、あなたが100万円の借金を、年15%の金利で借りたとしましょう。これを5年間の60回払いで返済する場合、返済金額はなんと「約142万7400円」にもなってしまいます。
確かに最初の支払いは抑えられるけれど、高い金利がついてくるから結局は元値より高い値段を払うことになるのです。すでにこのような借金をたくさん抱えている人はポジティブに、「借金を返せば投資よりも儲かる」「借金を返すことは、最高の節約」と考えてください。
節約をする上で多くの人は何かしら節約の目安があった方がいいと思います。そこで一つ参考になるのが、アメリカのファイナンシャルアドバイザーがよく勧めている「5・3・2の法則」です。
5割:生活費
3割:投資
2割:自由に使える娯楽費
このように月々の収入を割り振るという考え方。
例えば手取りの月給が30万円なら、15万円を生活費に、9万円を投資に、6万円を娯楽費として自由に使うという感じです。
しかし、これを実際にやろうとすると、「15万円で生活するなんて無理!」「娯楽費が6万円じゃ足りない!」とか色々思うんじゃないでしょうか。
そこで僕が強く勧めたいのが、「3・5・2の法則」です。
つまり、まずは「3割を投資する」ことを最優先にするということです。「積立投資」という方法を使うと、毎月の指定日に自分で決めた金額を投資することができます。これで簡単に「3・5・2の法則」を守れるようになります。
ちなみに高金利の借金を抱えている人は、「5・5の法則」にして5割を借金の返済、5割を生活費にして一気に借金を返してしまいましょう。金利が高い借金を返し終えて、エマージェンシー資金もできた!それが投資を始めるべきタイミングです。
僕がお金のない子供時代を過ごしたことで、得をしたことは「節約筋」を大きく鍛えられたことです。節約筋を鍛えるには、節約をしていくしかありません。
最初は「自分が使っているお金」を少しだけ意識してみてください。そして、お金を払うときに、「その価値があるのか?」ということをシビアに考えてみて。
また、節約筋のトレーニングになるのが「仕事の苦労を思い浮かべる」ということ。
今仕事をしている人は、一度、時給換算をしてみるといいでしょう。そうすれば、例えば5000円のモノを買おうとする時は、「その時間分の仕事の苦労に見合っているのか」を考えるようになります。
お金のことを実感に結びついた数字で意識できるようになれば、節約筋はどんどん強くなっていきます。
めちゃくちゃ役立つツールに「老後計算機」があります。
頭の中で「このお金をとっておけば、どうなるかな」と計算することを、僕は老後計算機と呼んでいるのです。
今使おうとしているお金は、10年ごとに倍増していく可能性があるのです。というわけで100円を老後計算機にかけると、「50年後には3200円に膨らむ」ということに気づくことができます。
今、あなたが何気なく使おうとしている百円玉は百円玉2枚と千円札3枚だ、と考えてください。将来の自分に(または子どもや孫に)豊かさをもたらす人生の旅において、この「老後計算機」の習慣は大きな第一歩です。
ある程度の節約筋がついたら、次は収入を増やすことを考えてみましょう。
収入にはアクティブインカム(労働収入)とパッシブインカム(不労収入)があります。まずはアクティブインカムを増やす方法を考えていきましょう。
大事なことは「人の役に立つと収入が増える」ということです。仕事をうまくやって、たくさんの人の役に立てば、それだけ収入が増えていきます。また、収入を増やすためには、仕事の効率UPが出来る設備投資をすることも大切です。
お金を生むのはそこに「不足」があるから。人は不足を感じるものほど、たくさんのお金を払う気になります。つまり、アクティブインカムを増やすコツは「人の不足」に目をつけることです。
アクティブインカムを増やすためには、キャリアチェンジも有効な手段です。
今の仕事よりも大きな「不足」のある業界に転職することができれば大きく生涯収入を伸ばすことができるかもしれません。しかし、新しいことにチャレンジするなら、とにかくお金のことをシビアに考えなくてはいけません。収入が下がる可能性も付き纏ってくるからです。
日本に来てから僕は、英会話教室で働いていましたが、もっとエキサイティングなことに挑戦したいと考えました。しかし、いくらチャレンジ精神があったとしても、生活費をまかなえないほど収入が下がってしまえばその挑戦は断念せざるを得ません。
そんなふうに考えた僕は、とにかく2年半は給料をもらいながら、奨学金を完済して、「チャレンジ資金」を貯蓄しました。そして最悪の事態を想定した「撤退ライン」を想定し、そのラインを超えたらアメリカに戻って就職しようと定めました。最初にこの撤退ラインを決めたことで、僕は前向きにチャレンジができた気がします。
ただ、転職をしなくても収入を増やすことはできます。その方法は「給料交渉」です。
アメリカ人と比べて、日本人は給料交渉に消極的です。日本では年功序列によって給料が決まる傾向にありますが、僕は給料は「会社への貢献度」に応じてもらうものだと思っています。僕は日本人の控えめなところが大好きですが、もう少しだけ積極的になってもいいのかもしれませんね。
アクティブインカムは収入の基本です。でも、アクティブインカムだけに人生を預けるのはちょっと危ない。アクティブインカムには、「自分が働かなければならない」という大きな弱点があるからです。
そんな弱点がパッシブインカムにはありません。僕が目指しているのは、パッシブインカムがアクティブインカムを超えること。そうすれば、例え仕事がなくなったとしても、自由に生活ができます。
投資について説明する前に、まず言っておきたいのは「投資とギャンブルは別物」ということ。
日本に来て僕が驚いたのは「投資はギャンブルだ」という考え方が多かったことです。ギャンブルは勝者と敗者、つまり「Win-Lose」に分かれますが、投資はお金を払った人ももらった人も嬉しい「Win-Win」になっています。
投資することは「価値のあるもの」にお金をかけているのであり、「賭けている」わけではないのです。
例えば、株式投資なら、お金を払う代わりに株式(会社の価値そのもの)が手に入ります。
しかし、ギャンブルにはそのものになんの価値もありません。例えば、「ロト6」などの宝くじは、お金が増える極小の可能性に賭けているだけなのです。「価値」という概念はどこにもないですよね。
投資を始める前に、損を避けるためのセオリーを覚えておきましょう。それは、「長期投資」と「分散投資」です。
長期投資は、「長く投資を続けよう」ということ。1年より10年、10年より20年と可能な限り長く続けることが投資では重要になってきます。過去70年のアメリカの「S&P500指数」という株価をみてみると、短期間では株価は上下していますが、総合的には右肩上がりに伸びています。歴史上のデータでは、この株を1年持った場合約74%の確率でプラスの利益が出る。5年だと87%、10年だと94%、そして、20年持てば、なんと100%の割合で利益が出るはず!つまりどの時点でこのファンドを買っても20年待って売ったら利益が出ているはずなのです。
次に、長期投資と並んで大事な分散投資についてみていきましょう。
株価は長期的には伸びていくという話をしましたが、もちろん全ての会社が伸びるというわけではありません。伸びない会社の株に投資してしまったら損をしてしまいます。
株歴の長い僕でも株価を予測するのは相当難しいです。だから、分散投資をして、リスクを下げることが大事なのです。分散投資のコツは、色々なタイプの銘柄に投資先を分散することにあります。異なる銘柄を組み合わせることで、一部の銘柄の値下がりをほかの銘柄の値上がりでカバーするのが、分散投資の強みです。
投資信託は「インデックスファンド」と「アクティブファンド」という2つに分けることもできます。
インデックスファンドは、株式市場の平均的なリターンを目指すもの。アクティブファンドはインデックスファンドよりも高いリターンを狙うものです。一見、アクティブファンドの方が良さそうに見えますが、おすすめはインデックスファンド。なぜなら、歴史的に見ると、約8割ものアクティブファンドが、インデックスファンドよりも利益が下回っているからです。
パックン式の投資法は、「インデックスファンドに投資する」「ずっと触らない」以上!
とにかく言っておきたいのは「分散して長期投資する」というコツを一番簡単に実現できるのがインデックスファンドだということです。
インデックスファンドのメリットは、長期投資と分散投資が簡単にできること。
それに、投資信託にはいろいろなタイプがあるので、自分の好みに合わせて、選ぶことができるのです。
僕が一番おすすめするのは「S&P500」という株価指数に連動するインデックスファンド。
「S&P500」はアメリカの企業500社によって構成されています。構成銘柄の一部にはアップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、テスラ、ジョンソン&ジョンソンなど、みんなも一度は聞いたことのある会社も含まれています。
また、S&P500に入っている会社の多くは、世界中でビジネスをしている企業で、世界の経済成長の恩恵を受けています。さらには自動的に構成銘柄の見直しが行われており、買い続けるだけで優良株に自動的に投資を続けることができるのです!
投資資金を振り分ける時には「ピラミッド」のイメージを持つといいです。大事な基礎である土台には「自分の教育や健康な体、家族など」、「エマージェンシー資金の貯金やお堅い債権の投資」を持ってきましょう。
その土台ができたら「S&P500などのインデックスファンド」を重ねましょう。
「土台&S&P500」という手堅い資産があれば、長期的にお金で困る可能性はかなりの確率で避けられます。「さらに投資を楽しみたい!」という人は、もう少しリスクを高め、投資金額は抑えめにしつつ、色々な投資に挑戦してみてもいいと思います。
自分の理想のピラミッドを決めたら終わりではありません。人生の状況によってリスク許容度は変わってくるので定期的に見直すようにしましょう。
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