本書では、18歳でニューヨーク大学大学院を卒業し、その後、大手投資銀行JPモルガンでFXトレーダーとしても活躍したキャシー・リーエンが、FXの基礎知識からトレード方法まで解説。
ここでは【基礎編】として、一部内容を紹介します。
外国為替市場は、世界最大にして最速で成長している市場です。従来から、政府や企業、投資家や旅行者、その他大勢の人々が外国為替プラットフォームを通じて通貨の両替や「交換」をしてきました。
個人投資家はこの20年の間、外国為替を取引できるようになり、人気が沸騰しています。個人投資家が参加してきたことで市場の取引量は急増しましたが、その一方で、ボラティリティー(相場変動)も高まりました。
為替相場が動けば、株式市場や債券相場にもその影響が及びます。株式や債券、商品のトレーダーがより根拠のある投資判断を下したいのであれば、為替相場の動きにも気を配ることが重要です。
世界でもっとも流動性のある外国為替市場は、その豊かな取引量ゆえに、低い取引コスト、高いレバレッジ、上昇相場と下落相場の両方で利益を狙えるという特性、エラーが最小限に押さえられたレート、わずかなスリッページ、値幅制限やアップティックルールがなく、24時間取引できる環境をトレーダーに用意しています。
有効なトレード戦略を考える前に、外国為替市場で何が相場を動かすのかを理解することが大切です。その上で、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両方を組み合わせると最高の戦略になる傾向があります。
ファンダメンタルズ分析は、需要と供給に影響を及ぼす経済、社会、政治の各要因に焦点を当てます。ファンダメンタルズを判断するトレーダーが目を向けるのは、経済成長率や金利、インフレ率、失業率といったさまざまなマクロ経済指標です。
通貨は主に需要と供給に基づいて動きます。すなわち、通貨に需要があるから、その価格は上下に動くのです通貨の需要と供給に対しては数多くの要素が影響します。その要素とは資本移動、貿易動向、投機、ヘッジです。
テクニカル分析は、値動きを研究することに焦点を当てています。テクニカルアナリストは過去の為替データを使って将来の相場動向を予測します。
現在の市場に関連するすべての情報は、すでに為替相場に織り込まれているという考えがあります。したがって、トレードの意思決定をするには値動きの歴史だけで充分ということになります。
テクニカル分析の根底にあるのは、相場はトレンドを形成する傾向があるという考え方です。トレンド発生の初期段階でトレンドを発見できることが、テクニカル分析をするうえでの鍵となります。また一定の値幅で持ち合うレンジ相場でも、テクニカル分析を使うことができます。
しかし、ファンダメンタルズ要因がトレンドの発生や反転といったテクニカルな動きのきっかけになることもあるため、両方の戦略を組み合わせて使うことが重要です。
外国為替取引はタイミングがすべてです。効果的で時間効率の高いトレード戦略を練るには、トレーダーが自分のトレード時間中のチャンスを最大限に活かすために、流動性が絶え間なくあるかどうかを理解しておくことが重要です。
外国為替市場には、主に3つの時間帯があります。
・アジア(東京)時間(米国東部標準午後7時~午前4時)
・米国(ニューヨーク)時間(米国東部標準午前8時~午後5時)
・欧州(ロンドン)時間(米国東部標準午前3時~正午)
ロンドンは外国為替市場のシェアが40%を超える世界最大の市場であり、最も重要な為替取引の中心地です。流動性と効率性が高いことから、主要な為替取引の大部分はロンドン時間で行われます。そのため、ロンドン時間は、変動幅が最大になります。中でも米国と欧州が重なる時期の取引がもっとも活発になります。
ファンダメンタルズ派でも、テクニカル派でも、経済指標の重要性を軽んじてはいけません。テクニカル分析だけでトレードしていると言い張るトレーダーを数多く見てきました。しかし彼らもまた、重要な経済指標が発表される前には、高い頻度で様子見をしていました。
ブレイクアウトを狙うトレーダーは、為替市場をもっとも大きく動かす可能性のある経済指標を知っていれば、ポジション量をそれに合わせるのに役立ちます。全体的に見て、どの経済指標が相場を最も動かすかを知っていることは、トレーダーにとって非常に重要です。
以下では、経済指標発表後の20分間とその当日のドルを動かした指標をまとめました。
・発表直後の20分間にドルを動かした指標
・1日(発表当日)にドルを動かした指標
1. 非農業部門雇用者数(失業者数:米雇用統計)
2. 政策金利
3. 対米証券投資動向(国際資本統計:TIC)
4. 貿易収支
5. 経常収支
6. 耐久財 受注
7. 小売売上高
8. インフレ率(消費者物価指数:CPI)
9. 国内総生産
外国為替に関していえば、どの通貨も他の通貨の影響を受けることなく取引されているわけではないということを理解するのが、最も重要です。外国為替市場では、すべてが多少なりとも相互に関連しています。それぞれの通貨ペアが他の通貨ペアに対してどのように動くのかを考えるのは大きな利益に繋がる可能性があります。
エクスポージャーとリスクを測るためには、保有している通貨ペアの相関が強いのか弱いのかを理解することが最善の方法です。相関を示す数値とは基本的に、一定期間にわたり通貨ペア同士がどのくらいの頻度で同じ方向に動くのか、あるいは逆方向に動くしたものを推定します。
通貨の相関を分析するうえで覚えておくべきポイントは、相関は時とともに変化すること。外国為替市場を取り巻く環境は絶えず変化しているため、最新の状況を把握しておくことが不可欠です。
成功しつづけているトレーダーとは、どんな状況でも規律を守れる人です。一人前のプロトレーダーになるための第一歩は、「トレード日誌」をつけること。同じ失敗を繰り返したり、大きな損失を避けたりするためには、トレード日誌をつけることが何にもまして重要です。
トレード日誌に書き込むべき項目は以下の3つです。
トレーダーが理解しなければいけない最も大切なことは自分がどのような相場状況でトレードしているかを認識することです。そして、トレンド相場なのか、レンジ相場なのか見極めるために、相場状況を分類する何らかのチェックリストが必要になります。
レンジ相場とトレンド相場を判定するための条件は以下の通りです。
レンジ相場
・ADXが20未満
・インプライド・ボラティリティーの低下
・リスク・リバーサルがゼロラインを挟み、コール・プット間で揺れ動く
トレンド相場
・ADXが25超
・モメンタムが持続的にトレンド方向に沿っている
・リスク・リバーサルがプットまたはコールに強く偏っている
※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。