勝ち続けるためのデイトレード手法を伝授する本書から、ここではデイトレード手法の基本中の基本と、はじめに知るべきエントリーポイントを1つ紹介します。
FXの初心者から、「最初に何から勉強すべきか」という質問を受けたとき、私は「テクニカル分析を身につけることです」と答えています。
為替市場は、巨額の資金が限られた通貨ペアに集まっているため、大きな資金で注文を入れても、それだけで一気に価格が変動するようなことはありません。機関投資家であっても長期間にわたって通貨の価格を操作することは不可能です。つまり、メジャーな通貨ペアは操作された不自然な値動きがないので、常に適正な値動きをしていきます。適正な値動きをしていると、テクニカル分析がとても機能するのです。
デイトレード手法は、1回のトレードで100pipsなどのように利幅を稼ぐものですが、必要なのは相場の流れに従うことだけです。そのためには、シンプルなテクニカル分析で十分なのです。たとえば、トレンドラインを引く、ローソク足の高値と安値を観察する、などです。
複雑なトレードで勝ち方を覚えると、それを維持するのも面倒になり、疲れてしまいます。長く続ける秘訣は、シンプルな手法にすること。当たり前のことを継続することこそ、10年先も機能する秘訣です。
デイトレード手法を実践するためチャートに表示するのは次の2つです。
・ローソク足
・移動平均線
最初に、「ローソク足チャート」を表示させ1本目の移動平均線を表示させます。パラメータの設定は以下です。
①期間:25(「移動平均25」ということです)
②移動平均の種別:Exponencial(「ExponencialMovingAverage」の頭文字をとって、EMA※指数平滑移動平均線といいます)
③適用価格:Close(終値)
これは、正式には「指数平滑移動平均線25」と言い、一般的な言い方は「25EMA」です。
移動平均線は全部で3本表示させるので、次に2本目の移動平均線を設定します。パラメータの設定は以下です。
①期間を「75」に変更(75EMAということです)
②線の種類(色)を変える。「25EMA」と違うものを選択する
3本目の移動平均線も、同じ要領で数字だけ変えます。
①期間を「200」にする
②線の種類(色)を変える。「25EMA」「75EMA」と違うものを選択する
これで、3本の移動平均線が表示できました。この3つの移動平均線が表示できれば、チャート設定は完成です。
私が25、75、200EMAを採用している理由は、「なるべく次のような相場の仕組みに則したい」という考えがあるからです。
・3種類のトレンド(短期トレンド/中期トレンド/長期トレンド)
・3種類の相場の流れ(上昇トレンド/下降トレンド/横ばい)
本書のデイトレード手法は、「トレンドを見極めること」を重要視します。トレンドを見極めることができれば、順張りも逆張りも可能になります。トレンドは、「短期トレンド」「中期トレンド」「長期トレンド」の3つに分けられます。それぞれのトレンドの期間は、おおよそ次のようなイメージです。
・短期トレンド:1日~数日
・中期トレンド:数日~数週間
・長期トレンド:数週間~数か月・年単位
それぞれのトレンドで使う時間軸は、次のようなイメージです。
・短期トレンド:1分足・5分足・15分足・1時間足
・中期トレンド:1時間足・4時間足・日足
・長期トレンド:日足・週足・月足
トレンドをチェックするときは、あらかじめ3種類に分けるつもりでチャートを分析するといいでしょう。そうすると、「短期的には上昇しているけど、長期的にはそうではない」など、具体的に相場をとらえることができます。移動平均線を3種類にしているのは、このためです。
EMAの期間は「トレンドの期間」に合わせています。
・短期トレンド:25EMA
・中期トレンド:75EMA
・長期トレンド:200EMA
たとえば、200EMAが水平なら、長期的に見てトレンドが発生していない状態です。しかし、短期的には上昇トレンドが発生することもあります。また、3本の移動平均線がすべて下向きなら、短期的にも、中長期的にも下降トレンドが発生している環境です。
Aの環境では、3本の移動平均線の向きはバラバラで、方向性がありません。ローソク足も、移動平均線を上下しています。一方、Bでは移動平均線が3本とも下向きです。3本の移動平均線がこのように並ぶことを「パーフェクトオーダー」といいます。
期間設定の違う移動平均線3本を活用することで、各々が短期・中期・長期という役割を果たし、総合的に判断できるということです。
前述の短期、中期、長期の3つのトレンドそれぞれに、上昇、下降、レンジという3種類の流れがあります(合わせて「3×3」です)。
・上昇トレンド
・下降トレンド
・レンジ(横ばい)
トレードをはじめる前に、この9つの組み合わせのうち、現在どの環境にあるのかを把握し適切な戦略をたてなければなりません。これがチャート分析の基本です。あとは、トレード手法によって、どこでエントリーするのかを決めていくのです。基本である、相場の流れをきちんと理解していれば、どんな手法にも応用できるようになります。
デイトレード手法は、時間軸が長すぎず、短すぎない15分足で売買判断をします。5分足では売買シグナルが多すぎて、トレードがせわしなくなります。逆に1時間足以上になると、ポジションを翌日に持ち越すことが多くなるので、長いということになります。
私はさまざまな時間軸を試してきた結果、15分足に落ち着きました。どの時間軸でも、私の手法と同じような見方でトレードすることはできます。15分足は、あくまでも、朝から夜まで相場のことだけを考えている私の生活スタイルを基準に決めた時間軸です。「相場が上昇する」ポイントを見極め、適切にエントリーするという戦略は、どの時間軸でも同じなのです。シンプルなチャートで、程よい時間軸でトレードするからこそ、まったく苦にならずにトレードできます。これが、継続的にトレードをしていく秘訣です。
トレードで確実に利益を出していくために、どんなトレードをしていきたいのか、イメージしておくことをおすすめします。
イメージしていると、本当にそのようなトレードができるのです。こんなトレードがやってみたい、という願望があればそれをイメージしてください。イメージ通りにうまくいったトレードは、自分の実力になります。そして、イメージできると、トレードの軸がブレなくなります。「イメージができないならエントリーしない」というように、負けるトレードを防ぐことにもつながります。
もしイメージがなければ、私と同じように、15分足チャートを中心に、最初は1回のトレードで数十pipsを狙う形をイメージしてみてください。
1つ大事なことをお伝えすると、レンジ相場よりも、トレンド相場を見極めることが重要です。トレンド相場の見極めができれば、そのあとのレンジ相場も、自ずとわかるようになるからです。
レンジ相場ばかり見ていると、小さな上下動に振りまわされて、大きな流れを見落とすことが多くなります。大きなトレンドで、大きなトレードをする意識が必要です。トレンドという大局を把握してこそ、レンジもわかります。トレンドが発生していなければ、自ずとレンジ相場になるわけです。小から大を見るのではなく、大から小へと視点を移していく意識を持ちましょう。
トレードが上達するには、「努力の方向性」が重要です。検証可能な思考の道筋が残る努力を意識していきましょう。正しい努力をするための方法は、「今、何のために分析をしているのか」「昨日予測した値動きの結果と要因を復習する」など、目的をもってチャートを見るようにすることです。
必要な知識をインプットしたら、アウトプットしながら実践を繰り返していきます。効率よく経験値を積み上げるため、次のようなことを意識してみてください。
・決めた時間に毎日取り組む
・今、何のためにこれをやっているのか自分なりに考える
・継続力や集中力を持つ
・すぐに役にたたないような知識でも長期的な視点で吸収する
・トレードノートを取る
・相場とはどんなものか理論や概念も考える
これらを意識しながら日々取り組むと、質の高い経験ができます。
また、私がおすすめするのは、「短期間に集中して覚える」ことです。集中的に知識を取り入れると、それが新鮮なまま、次の知識を吸収できるようになります。こうなると、相乗効果で効率よく頭に入ってきます。FXのようにさまざまな知識を総合的に判断する必要がある投資では、相乗効果が大きな成果を生みます。取り入れた知識は、すぐに実践するくらいのスピードで取り組んでください。
ここまでが、デイトレード手法の基本中の基本であり極意です。
トレンドが出はじめる箇所にラインを引いていくのですが、このラインを引くことが、エントリーするうえで、もっとも重要になります。ラインに価格がぶつかったり、ラインをブレイクしたりすることで、トレンドが出はじめるからです。これらを「ネックライン」といいます。ネック(障害、ボトルネックの略)になる、つまり、とても重要になるラインという意味です。ネックラインを引くことで、エントリーポイントを絞ることができます。そして、エントリーは次の2つの条件がそろったときに行います。
1.移動平均線がパーフェクトオーダーであること
2.ネックラインが引けること(横、斜めどちらでもよし)
3本の移動平均線がトレンド方向へきれいに並ぶ「パーフェクトオーダー」は、上昇トレンドの場合、上から「25、75、200」の順番になります。一方、下降トレンドの場合は逆で、上から、「200、75、25」の順番です。
図は上昇トレンドの売買シグナルを示したものですが、Cのポイントが買いのシグナルになります。
Cの直前の移動平均線に注目すると、パーフェクトオーダーになっています。上から、25、75、200の順番です。上昇トレンドが出ると、この順番をキープしたまま価格は上昇します。
パーフェクトオーダーになったら、「これからトレンドが出るかもしれませんよ」ということを示唆していると覚えてください。
しかし、パーフェクトオーダーが出たからといって単純に買い注文するのではなく、もう1つの条件をクリアする必要があります。それが、2つ目の条件である「ラインのブレイク」です。
今回のラインは、A、B、Cを結んだレジスタンスラインです。AとBが同じ価格帯で反落しているので、AB間に水平ラインが引けます。これが直近の高値となり、レジスタンスラインになります。そしてCに来たとき、2つの判断ができます。
・レジスタンスラインを上にブレイクしてトレンド発生
・レジスタンスラインで反落してレンジになる
Cでひとたびブレイクすれば、ここぞとばかりに買い注文が殺到し(売り目線のトレーダーは買い戻しをする)、上昇トレンドになる可能性が高いということです。また、Cの直前でパーフェクトオーダーになっているので、移動平均線も上昇のスタートを示唆しています。
1.移動平均線がパーフェクトオーダーである
2.ネックラインをブレイクする
この2つが売買シグナルです。仮に条件がレジスタンスラインだけ、移動平均線だけだと、トレンドが発生するかどうかはわかりません。実際にBのポイントでは、パーフェクトオーダーになっても、レジスタンスラインで止められています。移動平均線が上昇トレンドの形になりはじめ、かつ、ラインをブレイクしたからこそ、本格的に上昇トレンドにつながっているのです。
重要なのは、レジスタンスラインと移動平均線の、2つの根拠がそろっていることです。そこではじめて買い注文を出します。他のやり方に応用するにしても、根拠は1つではなく2つ以上探すのが大切です。
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