多くの方が金銭報酬を目的に複業をスタートしています。始めやすく、明確で、わかりやすい報酬です。しかし、複業によって得ることができる報酬は金銭報酬だけではありません。複業における報酬は大きく分けて「金銭報酬」と「非金銭報酬」の2種類です。
金銭報酬とは文字通り「副収入」を指します。なぜ複業という手段で副収入を得る必要性があるのか。明確に言語化することが必要です。より具体的に、かつ納得のいくまでとことん自分と対話し、向き合ってみましょう。
次のステップは、目標の設定です。オススメする目標設定の方法は「期限」と「目標金額」を設定し、理想の収益ポートフォリオを作成すること。いつまでに、どのくらいの副収入が必要か、目標を数値化し、目的を達成するための期間として妥当性があるのか確かめましょう。
非金銭報酬とはお金ではない形で得る複業の対価です。非金銭報酬には、複業を通じて今自分が持っていないスキルの習得や既存スキルの鍛錬によって自己研鑽することを指す「スキル報酬」、本業では得られない実績を複業で積むことや未経験の職種に挑戦することなどで自身の市場価値を最大化することを指す「キャリア報酬」、自分の好きな事業領域や生まれ育った地元の企業に複業で携わることによって得られる自己実現や他者貢献を指す「感情報酬」などが挙げられます。これらはお金を払っても得ることができないものなのです。
複業をはじめるときに大事なファーストステップとして、「複業の目的、目標を決める」この手順が最も重要になります。複業のはじまりは目的を決めることから。それ以外に1歩目はありません。
ハッシュタグ(#)とは、InstagramやTwitterなどのSNSの投稿で使用されるタグ。例えば旅先の写真をSNSに載せるときに閲覧者にわかりやすいように「#温泉」「#別府」などとタグをつけるでしょう。その作業のように、自分にスキルという形でタグをつけるのです。
なぜスキルを可視化し、自分にタグ付けをする必要があるのかは、採用する企業側の目線に立ってみると分かりやすく理解できます。複業採用の場合は基本的には「即戦力性」を求められるので、「転職活動での自己アピール=複業活動での自己アピール」という等式は成り立ちません。採用側の視点を理解することは、転職・複業に関係なく非常に重要です。
スキルのハッシュタグ化のポイントは「徹底的に具体化する」こと。スキルのハッシュタグを多くつけるために、複業をすることも1つの選択肢です。
複業をはじめる前に、本業の就業規則を必ず確認しましょう。皆様の中には隠れて複業(伏業)をしたいと思っている人がいらっしゃるかもしれません。しかしながら、大前提として、本業以外での活動を禁止している企業で無断で複業を行うことは服務規程違反にあたり、懲戒解雇事由に該当することがあります。
本業の上司や同僚へしっかりと「伝える」ことが「複業の成果最大化」につながります。複業は本業にも活きるものであり、リスキリングにもつながります。最低限のルールを守り、できることであれば、堂々と複業をはじめましょう。
複業は基本的にプライベートの時間で実施する活動です。当然ながら、自分の責任の中で行わなければいけません。複業に挑戦するすべての人に必須のスキルが「自己管理能力」です。不幸せな複業を招いてしまうケースとして、複業が当初の想定より多忙になってしまい、タスクとプレッシャーに追われてしまうことがあります。このようなサイクルに陥ったとき、もしくは自身の性格的に陥る可能性があると思われるときは、まず本業に専念し、タスク管理能力や生産性を高めた上で複業に挑戦する方がよいでしょう。
複業をはじめるときに大事なことは「複業時間割を設計する」こと。いつ、どのくらいの時間、どのようなスケジュールで複業を行うのか、複業先を決める前に言語化しておくことが重要です。
複業先を探す方法は大きく分けて以下の4つです。
1.リファラル(紹介)
2.人材紹介サービス
3.複業のマッチングプラットフォームサービス
4.SNS経由
あなたの複業の目的を達成するために、選択すべきことは「どこで働くのか」という環境です。いまや複業は民間企業だけでなく、行政やスポーツチームなどさまざまな領域で展開されています。民間企業、地方企業、行政の3ジャンルに分けてそれぞれの特徴を見てみましょう。
民間企業では、大手企業からベンチャー企業まで、さまざまな規模で複業人材の募集があります。
大手企業では、既存事業とは異なる事業ドメインの知見・経験を必要とするケースが多いです。業界・業種を超えたオープンイノベーションが求められる今、新規事業を共に立ち上げるプロジェクトメンバーや、専門知識を持つプロフェッショナルを複業で探している企業もあります。
ベンチャー企業での複業募集も特徴的です。実際に手を動かし、数字を見ながら、経営者と共に組織の成長に向き合ってくれるコアメンバーが求められます。中には、外部CXOとして、経営者の壁打ちや相談という非常に重要な仕事を求められるケースもあります。
地方に拠点を持つ企業が、リモートワークを前提として、全国から複業人材を募集する動きが出てきています。オンラインで働くという選択肢が出来たことで、場所を問わず複業人材を募集できる機会が生まれたのです。一見、複業とはつながらないような製造業や農業などの領域でも複業人材を募集していると聞くと、驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの自治体が複業人材を募集し、民間の力を必要としています。近年の急速なオンライン化により、デジタルや新しい法への対応、SDGsへの取り組みなど、いままでにない専門知識が必要とされる業務が増加しました。しかし、行政には経験者が少なく(すぐに採用することも難しく)知見・ノウハウが蓄積されていないのが現状です。そこで、複業人材が民間企業での経験を活かし、行政職員と共に地域課題を解決していく、新しい働き方が登場しました。
行政複業で叶う目的は、ズバリ、感情報酬です。地元に恩返しをしたい、お世話になった地域に少しでも関わりたいという想いを、複業で実現することができます。
複業では、素晴らしいスキルや実績を保有していても、コミュニケーションの重要性を理解していない人はなかなか活躍することができません。
現代はオンラインとオフラインを組み合わせ、有効的に活用するハイブリッドな働き方となりました。そのため、コミュニケーションの中でも重要な能力である、キャリブレーションスキル(相手の顔色・表情・姿勢などの非言語情報から感情を読み取る能力)も発動させる機会が減少しつつあり、「テキストコミュニケーションスキル」がいまの時代に求められるスキルとなりました。相手の表情や口調などの非言語情報の代わりに、しっかりと言語情報から相手の意図や発言背景を読み取る必要があるでしょう。
1.レスポンスの「速度」と「時間」
複業でのレスポンスルールを決めることです。レスポンスにおいて重要なのは速度と時間。まずメッセージを受け取ったことに対する返信をし、期日を自ら決めて改めて正式に返答をする旨を伝えるというような方法もあります。早いレスポンスを前提に、レスポンスができる時間を複業先に事前に伝えておくことが重要だといえます。
2.断る勇気を持つ
できないこと、不安なこと、自信がないことは素直に断ることも立派なコミュニケーションです。無理に受けてしまうことで自分に過度なプレッシャーをかけてしまい、結果的にパフォーマンスが低下してしまったら本末転倒です。
3.状況に応じてアラートを出す
想定外の状況に応じて早めに複業先と対応についてコミュニケーションを取れるかが、非常に重要になります。自分の身を守るためにもアラートは早く出すに越したことはありません。また、そのようなアラートを遠慮なく出すことができるように、日々の何気ないコミュニケーションを大切にしましょう。
4.1on1を依頼する
1on1とは1対1の面談のことです。複業メンバーだからといって1on1を依頼してはいけないことはありません。月に1回を目安に依頼し、実施してみましょう。
テキストだとどうしても変に気を遣って長文になり、何を伝えたいのか分からない文章になる傾向があります。情報から得る感情はどこまでいっても受け取り手がすべてです。複業という関わり方だからこそ1on1などで直接伝えましょう。
積極的に複業人材やフリーランスなどの外部人材を社内の「ジョブ」に登用する方針を打ち出す企業も増えてきました。複業という働き方は今の日本において非常に注目されており、これから文化になっていくと断言できます。
少子高齢化による労働力人口の減少、組織の在り方を変えたオンライン化により、それぞれのライフワークの理想像を再定義している人も多いのではないでしょうか。実際にこれらの働き方の変革により、地方企業で複業をする(できるようになった)人が増えています。
これからの合言葉は「まずは複業で」。複業と転職は非常に相性が良く、掛け合わせてキャリアを考えてみましょう。転職を「一か八かの賭け」にしないためにも「複業転職」という方法をオススメします。
「複業転職」とは、複業という形で企業に関わりながら、徐々に複業から正社員へと移行していく考え方です。「こんなはずじゃなかった」という転職を防ぐためにも、複業転職は選択肢に入れておいて損はありません。
また、ハードルが高い傾向にある異業種・異職種転職(キャリアチェンジ)においても複業転職が効果的です。まずは複業で向き不向きや自分の好きな仕事か、自分を成長させられるか、を確認し、さらに、複業で実務経験やアピールできる実績を積むことで、経験者として転職もしやすくなるでしょう。
複業と起業も非常に相性の良い組み合わせです。起業は生半可な覚悟で成功するものではありません。その点で、複業起業は戻る場所(本業)があるという心理的(または金銭的)安全性を担保しながら起業準備(資金用意、事業構想、人材集め)にコミットできることから立ち上げの初期には非常にオススメです。
複業の一番のメリットは、何かに挑戦したいときに大きく環境を変えることなくチャレンジできることなのです。
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