本書では、お金のトレーニングスタジオABCashを運営する児玉隆洋氏が、「これからの時代のお金の姿、必要なお金のスキル」について解説。
本書は投資や資産運用に関する話ではなく、急速に進化するテクノロジーによってお金がどう変わっていくか、といったお金を取り巻く環境にフォーカスしている点も特徴です。
ここでは本書より一部内容を抜粋して紹介します。
私たちのお金は今、大きな変革の時を迎えようとしています。
流れとしては2つあります。ひとつはお金の完全なデジタル化です。我々が長く親しんだ貨幣が、ついに次の形へ変わろうとしている、ということになります。もうひとつは新しい概念のお金の始まりで、企業や個人が発行するお金です。おそらくこれから数年のうちに、私たちの生活にはこれら新しい形のお金が入ってくるということです。
そしてお金は形だけでなく、その使い方や稼ぎ方も新しいステージへ進んでいきます。理由はテクノロジーの急速な進化です。これまでになかった形の新しいサービスやビジネスが、ものすごい勢いで始まろうとしているのです。
テクノロジーの進化は、私たちの未来の暮らしだけでなく、お金にも広く影響を及ぼします。お金の本質を理解し、お金とテクノロジーのメガトレンドを知っておく。これは新しいお金の時代に入るにあたって、最低限持っておきたいお金のスキルです。
次世代マネーの鍵となるデジタルのお金には、大きく分けて次の3つのカテゴリーがあります。「暗号資産」「CBDC」「ステーブルコイン」です。
これらはブロックチェーンの技術が活用されることがほとんどです。ブロックチェーンはデータの改ざんが非常に困難で、情報の信頼性がとても高く、取引の記録を消すことができない自律分散型システムという特徴を持ち、参加者が全員の取引履歴のコピーを記録する仕組みです。つまり、全員で監視するシステムです。
押さえておきたいのは、これからの時代のお金は、ブロックチェーンを始めとするテクノロジーと無縁ではいられないということです。テクノロジーをお金のスキルの一部として捉える。この目線が必要な時代になったのです。
CBDCとはCentral Bank Digital Currencyの頭文字をとったもの。中央銀行デジタル通貨と呼ばれます。中央銀行が発行するお金であり、つまりはその国の法定通貨です。日本ならば「デジタル円」です。現在、世界各国でCBDCの実用化に向けた動きが活発化しています。
理由はいくつか考えられますが、最も大きいのは不正の防止です。CBDCはデジタル通貨なので、いつ・どこで・誰が利用したのか履歴を残すことが可能です。匿名性の高い現金とは異なり、利用者の足跡を追うことができます。もちろん、デジタル化によってお金を刷ったり、運んだりするコストを減らせるのも、メリットとして大きいでしょう。
ステーブルコインは、暗号資産の一種です。国が発行する法定通貨ではなく、企業や個人がブロックチェーンを使って発行するお金=コインです。
一般的な暗号資産との違いは、コインの価値を担保する仕組みがあるということ。
担保となる資産はいくつかありますが、メインは法定通貨です。法定通貨担保型ステーブルコインでは、決められた条件の下、ステーブルコインをドルなどの法定通貨と交換することができます。このため、価値を安定(ステーブル)させることができるのです。
ステーブルコインを利用して考えられるのは、国境を越える支払いや送金が簡単になることです。同じステーブルコインの経済圏なら両替の必要がなく、自由なやりとりが可能になります。
信用性、利便性を考えても、今後ステーブルコインは新しいお金のひとつとして、世界的に広がっていく可能性も十分にあります。
新しい世界は、これまでのインターネットやSNSとは異なる次元になることからWeb3と呼ばれています。
Web1.0は、一言でいうなら「一方通行」です。情報は企業や国が持っていて、個人はそれを受け取るだけという状態を指します。続くWeb2.0は「双方向」です。発信側と受け手が互いにやりとりできる世界を指します。
今始まっているWeb3は、一言でいうと「分散」です。個がそれぞれ運営・管理する自律分散型の世界。すべてが民主化された世界というのが基本的な概念です。
そこには、これまでにはなかったデジタル上の価値の所有や売買といった経済活動があります。大きなビジネスチャンスがあるため、世界中の国々、企業が今、Web3に向けて動いているのです。
これからWeb3の世界が始まっていくうえでキーとなるのは「メタバース」です。そして、お金に関する部分では、フィンテック※も大きく進化していきます。
※ファイナンスとテクノロジーを組み合わせた造語。IT技術を用いた新しい金融サービスなどを指す。
メタバースは仮想空間ですが、文字通り「超・宇宙」として捉えると、本質をつかみやすいと思います。メタバースは仮想空間として、たくさんの小宇宙=世界を作り出せる、ということです。メタバースからメタバースへの移動も簡単にでき、もちろん国境もありません。
リアルとメタバースのハイブリッド生活が当たり前になり、やがてメタバースで過ごす時間のほうが長くなる日も遠くないかもしれません。メタバースは、全世界規模での新しいデジタル経済圏なのです。
メタバースを知るうえで、知っておきたいのが「DAO(ダオ)」です。DAOとは、Decentralized Autonomous Organizationの略称で、分散型自律組織と訳されます。簡単にいうとメタバース上の株式会社のようなものです。メタバース上で何かプロジェクトを立ち上げたい場合、共感してくれる参加者を簡単に募って資金調達がスピーディになることで今、注目を集めています。
DAOでは独自の「ガバナンストークン」というものを発行して資金調達します。ガバナンストークンはインターネットユーザーなら誰でも買えるので、ハードルが低く、プロジェクトに賛同する人を世界中から募ることができるのが利点です。
もうひとつ知っておきたいのが「DeFi(ディーファイ)」です。これは分散させるという意味のDecentralizedとFinanceをかけ合わせた造語で、分散型金融を意味します。分かりやすくいうと、自律的な金融サービスです。新しい金融の形で、銀行や証券会社などの中央集権的な金融機関に頼ることなく、ブロックチェーン上のスマートコントラクトにより金融サービスを利用する仕組みです。
Web3、メタバースの浸透とともにDAOとDeFiは間違いなく広がります。なんとなくでも仕組みを理解しておくことが大事です。
お金そのものの姿形が大きく変っていく時代の中、私たちはこれまで持っていたお金に対する考え方や常識を、一度見直す必要が出てきています。
お金の知識はもちろん必要です。ですが、これからより大切になってくるのは、その知識を使って自分の頭で考え、判断し、実際に動かしていくこと。つまり、実践です。
世界が次の次元へと向かっている今、これまでとは異なる概念のお金も登場し選択がより複雑になることは確かで、気をつけないとつい、お金の表面だけを追ってしまいます。
最も大事なことは目的地を決めることです。人生の目的地、どういう人生が欲しいかをまずしっかり決める。目的地を決めれば、そこに向かうルートも取捨選択できます。お金のスキルとはつまり、目的地までちゃんとたどり着くスキル。目的地までガス欠や事故がないように運転していけるスキルです。
目的地を決めたら、どのぐらいの資産が必要かを考えることです。目的地から逆算する。この順序が大事です。逆算すれば、貯めるべき金額や投資に回す部分も真剣に考え、やるべきことがちゃんと見えます。
資産の運用を始めることはとても大事です。資産運用の基本としては2つやるべきことがあります。ひとつはお金がお金を生む投資をスタートさせること。もうひとつは持っている資産を分散させるということです。
アメリカではすでに「ダブルインカム」がスタンダードになりつつあります。ここでのダブルインカムとは、労働からの収入と資産からの収入がある状態のこと。資産からの収入とは金利や株式の配当、不動産の家賃収入などです。
これから日本は少子高齢化&人口減で、手取りが減っていくことが見込まれます。つまり、このダブルインカムの発想を持つということはアメリカ以上に重要になってくるのですが、中長期で取り組む必要があります。
目的地までに必要なインカムを少しでも得るには、1日でも早く行う必要があるのです。早く始めるほど複利効果が高くなるからです。複利というのは投資が生んだ利益が元本となって、新たな利益を生んでいく金利の仕組みのことです。
国もこの方法の投資を推奨しており、iDeCoやNISA、つみたてNISAといった税制優遇制度を用意しています。
資産形成を始めると同時に、今持っている資産を複数の資産に分散させておくというのも大事なスキルです。分散するメリットは、リスクを軽減できることです。世界同時株安や同時多発インフレのような危険があったとしても、ダメージを軽減できて自分のお金を守れます。
未来をよくするために重要なのが自分自身にも投資していくことです。自分はお金を生むことができる大切な人的資本です。稼ぐ力を身につけるために何ができるのかを考え、実際に動いていけるかどうかで未来は大きく変わってきます。
お金は人生を豊かにする道具です。収入を上げることは、この道具を増やせる最もシンプルで確実な方法です。一番手っ取り早いのは、成長産業にいる、成長する企業に入ることです。
これからの時代の上りのエスカレーターの条件は2つ。「個をエンパワーメント(力を与える)していること」「テクノロジー・データを活用していること」。ここが最初の分岐点であり、何より重要です。
成長するテクノロジーには共通点があります。DNA的欲求を程よく刺激していること。そしてユーザビリティが高いこと。その会社が行っている事業、商品、サービス、そして理念をこの視点で確認する習慣を持つと、見る目が養われていくはずです。
そしてもうひとつチェックしたいのが、業界が伸びるほどのペイン(痛み)があるのか?です。片頭痛級のペインを抱えている人が多ければ多いほど、その市場は大きくなるので企業の需要は増え、比例して成長していきます。あったらいいな、ではなく、解決したくて困っている課題がペインです。これがあるかどうかを見ておくと、上りのエスカレーターをより絞り込めるはずです。
収入を上げるポイントの2つ目は、自分の強みを鍛えることです。その業界が上りのエスカレーターにあり、さらに「会社の経営戦略の実現にはあなたが必要だ」と言われるほどのスキルがあれば、収入はうなぎのぼりで上がっていきます。
スキルアップに投資するのは非常に大事です。そして、スキルを伸ばすには自分が苦手なことより、得意なこと、強みを鍛えるべきです。
強みのレベルはどのぐらいあればいいのかというと、まず社内トップクラスを目指すことをおすすめします。より高みを目指すなら、日本一を狙うくらいでもいいと思います。
高い目標を持って能力を磨いていくことで、実際にレベルも上がります。続けていけばやがて周囲や社内で誰もついてこられない領域に達していきます。どんなに小さな強みでも、「あの人の右に出る人はいない」と言われる領域に行くことが、重要な時代なのです。
スキルの上げ方が分からない、どこから手をつければいいか分からない場合は、インプットを増やすのがおすすめです。インプットを習慣化して何が変わるかというと、ひらめきの量です。自分が持つ素材が多くなればなるほど、アイディアも豊かに出せます。
インプットの手段としてスマートフォンへのメモがあります。本を読んだり、YouTubeを見たりしていて気になったことや、いいと思ったものはメモします。とにかくたくさんの情報を蓄積するのです。そうすると、どこかで量質転転化が必ず起きます。インプット量を増やすことで、アウトプットの質が上がってくるのです。
インプットを増やして、新しい価値を提案できるようになると、どんな仕事でも成長していけます。インプットは裏切りません。自分を信じて続けていけば、必ず圧倒的な差になると断言できます。
収入を上げるためのスキルとして、最後にお伝えしたいのが「凡事徹底」です。新しいことにチャレンジし、仕事が面白くなってくると、だんだん日常の些細なタスクを疎かにしがちになります。ですが、これはよくありません。人の信用残高はこうしたところで減っていき、信用残高が減ると、仕事は任されなくなってしまうからです。
分からないことは素直に聞く、上手な人から学ぶというのも凡事徹底のひとつといえるでしょう。
そして収入を上げるために最も確実で重要なのは、少しでも若いうちに多くの経験を積んで成長することです。若いころの吸収力は高いし、ここでの成長が将来のキャリアや収入を左右するからです。
今、頑張ることは自分の収入を上げるだけではなく、企業の力を高め、日本の未来を明るくすることにもつながります。ぜひ、お金のスキルを磨いて当事者意識を持って仕事に臨み、凡事を徹底してください。皆さんが、これから訪れるお金のパラダイムシフトをたくましく乗り越え、それぞれの人生の目的地にたどり着けることを心から願っています。
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