家族が亡くなったときに受け取ることができる公的な遺族給付は次の4つです。
今回は、支給金額が大きく生活に影響を与える「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」について説明します。
※本書は2023年1月現在の情報に基づいています。年金法は改正が頻繁に行われているため、ご利用時には内容が変更されている場合があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取るには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
このうち、「亡くなった人の要件」と「遺族の要件」は遺族基礎年金、厚生年金で異なるためそれぞれの章で解説します。「家族の関係性の要件」は共通のため、最後にまとめて説明します。
遺族基礎年金とは、国民年金に加入している人が亡くなったときに、子のある配偶者または子に支給される年金です。受け取ることができるのは、子を養育する世帯のみです。
亡くなった人の要件は、次のいずれかに該当している必要があります。
遺族の要件はかなり限定的で「子のある妻か夫」と「子」だけです。子のない妻(夫)や父母、孫は支給されません。
加えて、妻(夫)は子と生計を同じくしていることが要件です。子は年齢が18歳になった後の3月31日まで、障害のある子は20歳まで、婚姻していないことが要件です。
子は亡くなった人の子どもに限定されます。再婚時の相手の連れ子は、遺族基礎年金の「子」と認められていません。
支給額は、子の人数に応じて決定します。亡くなった人の国民年金の加入期間は関係ありません。
支給期間は、子全員が18歳年度末(障害ある子は20歳)に到達するまでです。配偶者が再婚したときは、「子のある妻(夫)」でなくなるため、遺族基礎年金は受けられなくなります。
遺族厚生年金とは、厚生年金の加入期間がある人が亡くなったときに支給される年金です。原則、生涯支給されるため、将来の生活を考える上で大きな意味を持ちます。支給金額は満たす要件によってさまざまです。
亡くなった人の要件は、次のいずれかに該当している必要があります。
療養のため休職していても、厚生年金に加入していることになります。
長年病気を患っていると会社に貢献できないことを負担に思い、退職を考える人は多いです。しかし、退職後亡くなると「厚生年金加入中」の要件からはずれてしまい支給対象外になります。
また、療養中に短時間勤務などに切り替えたときは、厚生年金の加入から外れていないか確認が必要です。
要件の1つ「厚生年金に加入中に初診日がある傷病により5年以内に亡くなった」に気を付けてください。
在職中に体調が悪くても、検診で異常を指摘されても、我慢して勤務を続け、退職後はじめて受診し、亡くなった場合は支給を受けることができません。体に不調がある場合は、在職中に医師の診断を受けましょう。厚生年金加入中の受診が、後々の年金に大きな影響をあたえることがあります。
遺族の要件は、亡くなった人によって生計を維持されてきた配偶者、子、父母、孫、祖父母です。遺族基礎年金とは違って、範囲が広くなっています。
ただし、それぞれに個別の要件があるので確認が必要です。遺族厚生年金には、遺族の優先順位があり、配偶者と子が最上位です。自分より上位順位者がいる場合は遺族になれません。
遺族厚生年金の額は、亡くなった人の加入状況や平均月収などを基に計算されるので、人それぞれです。概算ですが、平均月収30万、厚生年金20年加入なら年間約29万円、加入が40年なら約59万になります。
一定の要件を満たせば、加算や特別な計算が行われ年金額が増えることもあります。例えば、入社1年目の厚生年金に加入中の会社員が亡くなったとき、最低保障として25年の厚生年金の加入期間があったものとして特別に計算されます。
支給期間は、支給を受けている本人が亡くなったとき、配偶者でなくなったときまで、子は該当の年齢に達したときまでです。言い換えれば、配偶者は再婚などの事由がないかぎり生涯支給されます。
遺族基礎年金・遺族厚生年金共通の要件である家族の関係性の要件とは、生計維持要件のことです。
生計維持要件とは、亡くなった人に生計を維持されていたかというのが要件です。「亡くなった日」の状態がどうだったかで判断されます。
40年以上も共に暮らしていた夫婦が病気療養のため別々の家族と暮らしていたことから、支給要件から外れる判断をされてしまったケースもあります。一緒に生活した長さよりも、直前の状況が優先されるのです。
生計維持要件には「生計同一要件」「収入要件」があり、どちらも満たす必要があります。
「生計同一要件」とは、平たくいえば、亡くなった人と「ひとつ屋根の下で一緒に暮らしている」ことです。基本的な考え方として、住民票で同一世帯の場合は生計同一として認められます。
別居している家族でも、次の場合は生計同一関係が認められることがあります。
やむを得ない理由や経済的援助を証明するためには次の書類等を提出します。
収入要件とは「遺族の収入が年額850万に達していない」というものです。遺された人の収入が多いと、遺族年金は受けられません。
遺族年金は、生活の安定と福祉の向上のためにある年金です。遺族に安定的な収入があれば、必要ないとされます。
ただし、おおむね5年以内に850万を下回るのが明らかな場合、事情を証明し、支給要件を満たすことができます。例えば、定年退職で収入が減ってしまう、亡くなった人の事業経営から給料を得ていたため、今後減収が見込まれるなどです。
本書では、残りの「寡婦年金」や「死亡一時金」についてもふれています。また、支給可能性のある遺族年金の型を16タイプに分け、どのような選択をする方が有利なのかも解説しています。
遺族年金には、受け取るためのさまざまな行動がありますが、共通して言えるのは家族が亡くなる前でなければできないということです。元気なうちに「今の状態なら支給されない」と知っておけば、行動することによって支給されるように変えていくことができます。
「まさか」のときに知識を備えて、自分の人生や家族の人生を守りましょう。
※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。