ETF(イーティーエフ/Exchange Traded Fund)とは、「証券取引所で売買される投資信託」のことで、「上場投資信託」とも呼ばれる。
いちばんの特長は、日経平均株価などの株価指数とほぼ同じ値動きをする(=連動する)ので、かんたんに「市場平均(株式市場の平均を表す数値のこと)」が買える点だ。
証券業界には、どんな投資信託でも長期的に市場平均を上回る利益を上げるのは難しいという常識があったが、ETFはかんたんに「市場平均」へ投資できるのだ。
ETFは「安心」「安価」で「かんたん」、かつ「夢」がつまっている。
■安心:ETFは普通の株と違い倒産がないので、価値がゼロにならない
■安価:一流企業の株を買うには多額のお金が必要だが、ETFなら1万円もあれば好きな銘柄が買える
■かんたん:個別の株を買うときより必要な調査・研究が少ない
■夢:ETFの基本は長期投資であるから、国内ETF購入の際には日本経済の将来に夢をもっていることが前提となる
ETFには8つのメリットがある。それぞれ詳しく見ていこう。
(1)インフレリスクを回避できる
インフレリスクとは、投資したおカネの増え方より、物価の上昇が大きく、おカネの価値が目減りするリスクのこと。
1970年から2000年までの30年の間、日本の物価平均は3.2倍になったが、預金していたおカネは2.3倍にしか増えていない。
一方で、日経平均株価は6.9倍に上昇しており、預金では回避できなかったインフレリスクを日経平均株価に投資していれば回避できていたということ。日経平均株価などの株価指数への投資はETFでかんたんに実現できる。
(2)安上がりに分散投資ができる
分散投資とは、複数の投資先(株や債券など)に分けて投資すること。損する危険性を減らす方法として、投資の基本とされている。
分散して投資すれば、そのうちの1つが値下がりしても、ほかの投資先でカバーでき、全体としての損を減らせるのだ。
ETFなら、ただ買うだけで分散投資ができる。たとえば「TOPIX連動型上場投資信託」というTOPIXと同じ値動きを目指すETF銘柄は、TOPIXとほぼ同じ1700の株銘柄を組みいれている。このETFを買えば、自動的に東証一部上場の約1700社に分散投資したことになるのだ。
さらに、同じ分散投資でも、ETFは個別に1700社の株を買うよりも、ずっと安い金額で買うことができる。
(3)手数料が安い
投資信託と比べ、ETFの購入手数料や信託報酬(運用管理費のようなもの)は安い。ETFの各手数料は証券会社によって違うので、購入時には注意したい。
(4)希望する値段で買うことができる
ETFの購入金額は「市場価格×口数」で決まる。市場価格は証券取引所の取引時間中は変動しており、基準価額が1日1回しか変動しない投資信託と比べ自由度が高い。
(5)好きな時間に何回でも買うことができる
ETFは取引が可能な時間ならば1日に何回も売買できる。実際の取引では、取引時間の終了直前に株価が急上昇、ということもよくあり、投資信託なら逃してしまうチャンスも、ETFならしっかりつかむことができる。
また、東京証券取引所の取引時間は午前9時から午後3時までだが、私設取引システムがある証券会社ならば、証券所の取引時間外で売買できる場合もある。
(6)市場平均を簡単にとれる
ETFは、何もしなくてもただ買うだけで、市場平均をとることができる。ETFには日経平均株価などの連動対象の株価指数と同じ株銘柄が組みこまれているから、個別に企業研究をする必要もなく、初心者でもただ買えばいいのだ。
(7)信用取引で価格下落による損失を減らせる
ETFは信用取引もできる。信用取引とは、株式を買うのに必要な資金や売りたい株式を証券会社などから借りることで、口座にある資金の3倍まで売買ができるというもので、「カラ売り」も可能。
信用取引はリスクヘッジとして活用することが可能で、自分が保有しているETFが値下がりしそうだと予測した場面で「カラ売り」をすれば、価格変動による損失を減らすこともできるケースがある。
(8)分配金による再投資で複利効果が期待できる
ETFも投資信託同様、投資先の株式から配当金の一部(分配金)がもらえるため、その分配金の再投資による複利効果を期待できる。
再投資とは、生じた収益を再びその投資対象に投資すること。収益を投資資金に回し、投資資金が増えることで、さらに大きな収益を狙えるのだ。
ETFには基本のリスクと上場廃止のリスクがある。
(1)価格変動リスク
ETFの連動対象である日経平均株価などの株価指数が急に下がったり、上がったりするリスク。その結果、予期しない損失を受けることがある。
(2)運用リスク
ETF価格と連動対象の株価指数が大きくズレることで損をするリスク。ETFを買う前にはそのズレ(乖離率)を確認し、大きくズレているETFの購入は避けよう。
(3)流動性リスク
ETFの売り手・買い手が少ないため、希望価格で売買できないというリスク。このリスクを避けるために、取引量(出来高)が少ないETFには手を出さないようにするといい。
ETFは流動性や株価指数などとの連動性を基に審査を受けて上場されるため、基準をみたさなくなれば上場廃止になることがある。
このリスクを避けるには、購入を検討する銘柄が証券取引所のサイトで「猶予期間入り銘柄」一覧に載っていないか、出来高が極端に少なくないかの確認を行うようにしよう。なお、上場廃止が決定しても1カ月間は整理銘柄とされ通常通りに売買できる。
ETF投資の準備に必要なステップは以下の3つである。
ETFを買うには、ETF自体の情報と連動する株価指数などの判断材料が必要である。証券取引所や各証券会社のサイト、新聞などで手に入れよう。
ETF自体の情報:銘柄コードや売買単位、価格、純資産総額や出来高など
連動する株価指数などの情報:各指数の現在値やチャートなど
ETF投資をはじめるには「総合取引口座」の開設が必要だ。口座開設方法は各証券会社のサイトなどで確認しよう。海外で上場されているETF(海外ETF)の取引には、「外国証券取引口座」の開設も必要になる。
証券会社の指定口座に入金したら、購入するETF銘柄、数量、値段、買い・売りのどちらかなどを決め、注文を出す。売買が成立すれば、ETFを保有できる。
ETFは長期投資が基本
個人投資家は運用のプロとは異なり、いつまでに利益を出す必要があるといった「運用期間の決まり」がないため、「長期投資」をおススメする。
長期保有すればするほど多くの分配金が期待でき、ETF購入金額と売却金額が同じでも、手数料を超える分配金の累積があれば勝てることになる。ETF投資では最低でも3年、できれば5年は保有したいところだ。
ETF投資は余裕資金で行うのが基本である。手元にまとまった資金がない場合はETFの積立投資をおススメする。
証券会社によっては毎月1万円ずつのETFを買って、積み立てるというようなことができる。これだと、価格が高いときは口数を少なく、価格が低いときは口数を多く買うことができるのだ。
こうした定期的に一定金額を投資する方法は「ドルコスト平均法(定額購入法)」といい、平均取得単価を安くできる可能性がある。
ポートフォリオとはいろいろな資産の組み合わせのこと。ポートフォリオを組むことで、値動きの違う複数の銘柄を運用し、リスク軽減を狙う。
ポートフォリオは、中心となる「コア」とそれを補う「サテライト」に分ける。
(例1)預貯金とETF
コアでは使い道の決まった資金を預貯金などで運用し、サテライトとして余裕資金でETFを購入する。
(例2)ローリスク・ハイリスクのETF
コアにはローリスク・ローリターンのETF銘柄を、サテライトにはハイリスク・ハイリターンのETF銘柄をあてる。
日経平均株価などの株価指数に連動するETFは、「景気が良いときに売り、悪いときに買う」のが基本だ。
今の時期が買い時なのか、売り時なのかは、「景気」や「銀行預金の金利」で判断することも可能で、また今日が買い時なのか、売り時なのかを判断するときは「騰落レシオ」を活用できる。
景気の目安は「銀行預金の金利」から判断することもできる。預金金利は日銀が決める「政策金利」の影響を受けているからだ。政策金利は日銀がいろいろな経済指標から判断し、景気が悪いときに下げられ、良いときには上げられやすい。
「騰落レシオ」とは、その株式市場で株式が買われ過ぎか、売られ過ぎか、市場の過熱感を示す指標だ。
たとえば、日経平均株価の5日騰落レシオは、日経平均株価を構成する225銘柄から、「5日分の値上がり銘柄数÷5日分の値下がり銘柄数×100」(%)で求められる。
120%以上なら株式は買われ過ぎで、70%以下なら売られ過ぎなどと判断できる。
目先の判断には「5日騰落レシオ」、中期的な判断には「25日騰落レシオ」を使用するといい。
国内ETFは日本株の株価指数型が豊富で、市場別、業種別、規模別、テーマ別と様々な種類に分類できる。
(1)市場別ETF
株式市場の株価指数に連動するタイプ。日経平均株価型などのほか、新興市場型ETFもある。
(2)業種別ETF
銀行や電機、自動車といった業種別の株価指数に連動するタイプ。魅力は「伸びる業界」、「不況に強い業界」といったシンプルな買い方ができる点だ。
(3)規模別ETF
株式は時価総額や流動性をもとに大型株や中型株、小型株の3種に分類される。こうした規模別に分類し算出した株価指数に連動するETFもある。
(4)テーマ別ETF
一定のテーマをもつ銘柄で構成される株価指数に連動するタイプ。企業グループや経済情勢などを反映したテーマがある。
市場別ETFは東証一部や新興市場といった大きな市場に着目すればよく、その選びやすさが特徴だ。
ちなみに国内市場に上場されている外国籍ETFは、外国証券取引口座を持っていなくても、取引できる。
国内ETFにはその他
・商品、商品指数型
・外国株指数型
・外国通貨指数型
・外国債券指数型
・REIT(不動産投資信託)指数型
がある。これらのETFは分散投資先として日本株指数型と組み合わせての購入を検討しよう。
海外ETFとは、外国の証券取引所に上場されているETFのこと。取引は基本的にその国の外貨建てとなる。
世界にはたくさんの証券取引所があり、いろいろなETFが上場されている。とくに米国市場は上場銘柄数が多く選択肢が豊富という特徴がある。
(1)銘柄数が国内ETFよりも多く、種類もバラエティに富んでいる
(2)国際的な分散投資ができる
(3)売買時の為替レートが購入時より円安になっていれば、為替差益が得られる
海外ETFは国内の証券会社で買えるが、扱う銘柄や売買方法等は各社で異なる。銘柄数の豊富さや、利便性の点で、初めての人にはネット証券がおススメだ。
売買手数料、両替の際の為替手数料、信託報酬や外国株式口座管理料などのコストは証券会社により異なるので、各社サイトを確認して取引する証券会社を決めるといい。海外ETFの情報は取扱銘柄数の多い証券会社のサイトで集めよう。
海外ETFには森林の保護やクリーンエネルギー関連の企業、CSR(企業の社会的責任)貢献度の高い企業で構成されている指標に連動するETFなどがある。このような人類の「夢」や「幸せ」に役立つETFに投資することも可能だ。
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