投資信託とは、たくさんの投資家から集めた大きな資金をファンドマネージャーと呼ばれるプロが運用して利益を出し、最終的に投資家へ還元するといった仕組みをもつ金融商品である。
投資信託は今資産がない人、資産をこれから形成していきたいという人にも有効に活用できる。
少額から投資が可能な上に運用はプロが行ってくれるため、投資初心者でも始めやすい。
投資信託の最大の特徴は、バイキングのようにさまざまな株や債券、不動産などが詰め合わされている点だ。1つの投資信託に投資しているつもりでも、その中で勝手に分散投資されているため、仮に一つの企業の業績が悪くなっても、他の企業が好調であればトータルで利益を得られる可能性もある。
詰め合わせる内容は投資信託によって異なる。投資信託には6000もの種類があると言われており、思ってもみない投資対象に出会えることもメリットだ。
投資信託に組み込まれている金融商品は、株式や債券、不動産が多い。それぞれの金融商品にメリットとデメリットがあり、それは投資信託も同じである。「一番優れた金融商品」というものはないということを覚えておこう。
投資信託のメリット
・分散投資できる
・さまざまな投資対象に投資できる
・少額から投資できる
・プロが運用してくれる
投資信託にはさまざまなメリットがあるが、決して万能ではない。投資信託の仕組みや種類、投資信託を選ぶ際の注意点は最初に学習しておく必要があるだろう。
投資信託の儲け方は、キャピタルゲインとインカムゲインの2種類がある。
キャピタルゲインとは「売却することで得られる利益」であり、買った時と売った時の基準価額の差額である。「基準価額」とは、投資信託の価格のことを指し、これが買った時よりも売った時の方が値上がりしていれば儲かることになる。
キャピタルゲインを得るタイミングは、自分で投資信託を解約した時、投資信託が満期を迎えて償還となった時、投資信託の打ち切りが発生した時の3つがある。
投資信託のインカムゲインは「保有していることで得られる利益」で、「分配金」のことを指す。「分配金」とは投資信託を保有している間、毎月(毎年)支払われるお金のこと。分配金が出る投資信託と出ない投資信託があり、すべての投資信託でもらえるわけではないので注意しよう。
投資信託における利益は、このキャピタルゲインとインカムゲインの両方を合わせたトータルリターンで判断する必要がある。このトータルリターンを1年あたりに得られるリターンに直した数字を「利回り」と言う。
投資信託の運営には「販売会社」、「運用会社」、「信託銀行」と3種類の会社が関わっている。
まず、「運用会社」とは、投資信託を作って集まったお金を実際に運用する会社のこと。運用会社が作った投資信託を投資家に売るのは銀行や証券会社などの「販売会社」。そして投資信託で集めた資産を管理するのが「信託銀行」である。
運用会社が投資信託を作って、販売会社が販売してお金を集め、集まったお金を信託銀行が管理するのが基本的な流れ。
それぞれの会社に倒産など万が一のことがあっても、お金が守られる仕組みとなっている。
投資信託の攻めのコツは、「複利」と「期間」を考えること。複利とは、運用で得た収益及び利息を元本に含めて再び投資を行うことを指す。投資の利益をそのまま次の投資に回すことで、雪だるま式に資産を増やしていけるのだ。
この複利の効果を最大限活かすためには、「長い期間をかけること」がポイントになる。個人投資家ならばじっくりと資産運用を行い、複利を有効活用したい。
一方で、守りのコツは「分散」だ。投資において、「卵を一つのカゴに盛るな」という格言は有名である。それは、購入時から勝手に分散投資されている投資信託にも当てはまる。
例えば、国内企業の株だけが詰め合わされた投資信託を購入した場合、日本株市場全体が大暴落したら、その投資信託も大ダメージを受けることになるだろう。
そんなとき、日本株と逆の値動きをするような投資信託を購入しておくと、損失をカバーできる可能性がある。
値動きがばらばらの商品を複数持ち、「分散投資」を心掛けることが、守りの強化に繋がるのだ。
投資信託の取引価格「基準価額」は、毎営業日ごとに1度ずつ更新される。なお新聞に掲載されている基準価額は前日時点のものであり、今日買い付けても新聞の価格で取引できるわけではない。投資信託の規模については、「純資産総額(信託財産)」から把握できる。投資信託の純資産総額は、運用される株式や債券などの価格、配当や利息から計算され、日々の資産価格の上下や配当・利息の受け取り状況によって変動する。
投資信託の売買単位のことを「口数」といい、新聞で公表されている基準価額は通常1万口あたりの価格だ。
基準価額の上下の主な要因として下記の3つがある。
(1)投資信託が保有している株式・債券などの価格変動
(2)分配金の支払い時
(3)管理手数料の差し引き時
投資信託が設定されたタイミングの違いによって基準価額は大きく変わるため、基準価額だけで割安割高の判断はできないことに注意しよう。
投資信託の主な運用手法としてインデックスファンドとアクティブファンドの2つがある。
インデックスファンドとは、日経平均株価やTOPIXなどの指数(インデックス)と同じ値動きをするように目指して作られた投資信託のことを言う。日経平均株価などの指数を「運用の目標(ベンチマーク)」として、それら指数と同等の株式を保有することで、実際の指数と似たような値動きをすることが特徴。
インデックスファンドの運用コストは安めで、ノーロードと呼ばれる販売手数料無料の投資信託もある。
一方で、アクティブファンドはベンチマークを上回る成績を目指す投資信託だ。ファンドマネージャーがベンチマークに含まれない銘柄も追加しながらベンチマークを上回る成績を目指し積極的に運用していく。
ファンドマネージャーの実力によっては、ベンチマーク以上の実績を出すこともあるが、ベンチマークの実績を下回り、インデックスファンドより大きく悪い結果となってしまうこともある。
アクティブファンドの方が運用の手間はかかるため、インデックスファンドに比べてコストが高めである。
初心者にはわかりやすくてコストの安いインデックスファンドをおすすめしたい。アクティブファンドの中にも魅力的で優秀なものはあるが、投資信託を見る目を養って、自らの目でしっかりと投資判断できるようになってからでもいいだろう。
投資信託を選ぶ際は、「地域×投資対象」をベースに考える。例えば、日本の株式に投資する投資信託であれば、「(地域:日本)×(投資対象:株式)」となる。
複数の投資信託に分散させたつもりでも「地域×投資対象」で考えると地域がアメリカばかりになっていれば、アメリカ経済が悪くなると、資産に大打撃を受けることになる。
投資対象などを考えることが煩わしいと思うなら、一つの投資信託の中で株式、債券、不動産などに分散して投資するタイプの「分散型(バランス型)投資信託」もある。ただし、通常の投資信託よりも手数料が高くなる、微調整が難しいという点には注意したい。
自分で決めた投資方針で証券会社に運用してもらう「ファンドラップ」というサービスもあるが、まとまった資金が必要で、比較的コストは高い。
投資信託は他にも、毎月分配型や通貨選択型、公社債投資信託、上場投資信託、レバレッジ型などいろいろな投資信託がある。いずれにおいても、自分の運用スタイルに合う投資信託を選ぶようにしたい。
投資信託を買う際には、3大コストを理解し総合的に判断することが大切だ。
1つ目は、買い付け時に1回だけかかる販売手数料。対面での接客がある販売会社よりも、ネット専業の販売会社(ネット証券など)の方が安いことが多い。また、販売手数料がかからないノーロードファンドであっても後述する信託報酬が高い可能性があるため、トータルのコストを注意深く見て判断するべきである。
2つ目は、投資信託の運用にかかるコストである信託報酬。信託報酬は、運用期間中に取られ続けているにもかかわらず、利益から引かれるため取られていると感じにくい。年0.5%~2%前後くらいのケースが一般的だが、ちりも積もれば大きな額となるため、投資信託を選ぶ際は必ず確認しておこう。
3つ目は、投資信託を解約する際にかかる信託財産留保額だ。解約のペナルティとして0.1%~0.5%程度かかるのが一般的だが、投資信託によってはかからないものもある。
投資の世界においてリスクは「変動幅」のことを言う。損失だけでなく利益の時にも使う言葉だ。基準価額が大きく変動するような投資信託は「リスクが高い」。
以下の投資信託の主なリスクは最低限押さえておきたい。
リスクというとマイナスなイメージがあるが、必ずしもそういうわけではない。どのリスクもよい方向に動けば儲けの源泉になり得るのだ。
購入を検討する投資信託が見つかったら、まず初めに基準価額と純資産総額を確認しよう。直近3年間の推移をチャートで確認するといい。
人気がある投資信託は、基準価額と純資産総額の両方が一定もしくは上昇している。
反対に、あまりおすすめできないのは基準価額と純資産総額の両方が減少している投資信託だ。これは、運用も芳しくなく解約も増えている可能性がある。
純資産総額は大きい方が有利と考えられ、純資産総額が大きいほどコストの占める割合が小さくなる、繰り上げ償還のリスクが少なくなるというメリットもある。
こうした基準価額や純資産総額の推移は5年、10年と長期期間で確認するようにしよう。
月次レポート(マンスリーレポート)や目論見書も投資信託を選ぶ際の参考となる。
月次レポートは投資信託ごとに発行されているもので、投資信託に関する様々な情報が掲載されている。
レポート内でチェックしてほしいのは、主に「基準価額・純資産総額」「ベンチマークとの乖離」「資産構成比率」「組み入れ銘柄」「ファンドマネージャーのコメント」「騰落率」である。騰落率は「一定期間の基準価額の上下比率」を表し、他の投資信託と比較するときに役立つ。
目論見書は、投資信託の購入時に必ず交付されるもので、事前に読むことも可能。分量は多いものの、投資信託の目的や特色、リスク、運用実績、手数料まで掲載され、投資判断に必要な重要事項が書かれているので、必ず目を通しておくように。
投資信託の買い方には、「一括購入」と「積み立て購入」の2種類がある。
通称「スポット買い」とも呼ばれる一括購入は、投資信託を買うタイミングが勝敗を分ける。まとまった資金がないとスポット買いはできないため、既に投資する資産がある人の買い方と考えるとよいだろう。
「積み立て購入」はあらかじめ一定期間ごとに決められた金額で自動的に投資信託を買い付けていく投資方法である。投資信託の価格が高い時もあれば安い時もあり、同じように買っていくことによって、購入する基準価額は平均化される。
これはドルコスト平均法といって平均取得単価を下げる効果を期待できるため、投資初心者にはおすすめの方法だ。
金融商品をどう組み合わせて保有するか、についての取り決めを「ポートフォリオ」と言う。投資信託を買う際は、「地域×投資対象」をもとに、どんなポートフォリオになるかを意識しよう。
ポートフォリオの組み方の例を3つ紹介する。
(1)安定志向のポートフォリオ
安定志向の人は、国内債券を多めに取り入れる。国内債券はあまり儲からないが、安定した資産と言える。海外債券を組み合わせるなら、格付けの高い債券をメインにするといい。
(2)バランス型志向の人のポートフォリオ
安定志向のポートフォリオに比べ、海外の資産比率や株式の比率が大きくなる。株や債券に限らず、その他資産の比率を増やすことも検討できるだろう。
(3)積極志向のポートフォリオ
積極的に資産を殖やしたいと考えるなら、海外株式の割合を増やすことを考えるとよい。先進国だけではなく、新興国を候補に入れることも可能だろう。
ポートフォリオを決める時は3つの考え方を基本にしよう。
・年齢が若いうち、資産が少ないうちは多少リスクをとって資産形成を目指すこと
・年齢が上がるにつれて資産形成から資産運用に移っていくこと
・資産運用の段階では、リスクの少ない金融商品に切り替えていくこと
年齢とともに、ポートフォリオも少しずつ変更していくのがよいだろう。
ポートフォリオは投資信託を買った後も忘れてはいけない。資産価値は時間が経つにつれ、変動するため、ポートフォリオのバランスが崩れた時には、調整が必要となる。
例えば、米国株の資産価格が上がり、ポートフォリオ内の海外株比率が大きくなり過ぎた場合、海外株を売却し、他の投資信託を新たに買うことで、もとのバランスに調整することができる。
こうした作業を「リバランス」と言う。リバランスは半年に一度、1年に1度といったペースで行うようにしたい。
世界情勢は刻一刻と変わり、必ず儲かる方法は存在しないが、初心者が資産形成を始めるうえでの参考として、「王道の資産形成手法」を紹介する。
具体的には以下の手法を用いる。
(1)複数のインデックスファンドでポートフォリオを作成
(2)毎月一定額を自動積み立て
(3)定期的にリバランスを行う
ポートフォリオを作る際には、同じ値動きのものばかり持たないよう、「地域×投資対象」の偏りに注意したい。似たようなインデックスファンド同士で迷ったら、コスト、ベンチマークとの連動、純資産総額で比べるといいだろう。
この手法は地味ではあるが、古くから世界中の投資家に愛されてきた投資法で、結局はこれが王道の資産形成と言える。
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